三菱ケミカル(東京・千代田区)は、蛾の複眼(モスアイ)を模倣した構造によって光の反射を抑えるフィルム「モスマイト」を絵画などの額装向けに拡販する(図1、ニュースリリース)。同社のアクリル樹脂板「アクリライト」とモスマイトを取り扱う藤光樹脂(東京・中央区)が、アクリル樹脂の両面にモスマイトを貼り、低反射アクリル板として販売する。

図1:「モスマイト」の有無による見え方の違い
図1:「モスマイト」の有無による見え方の違い
左が無加工のアクリル板で、右が「モスマイト」を貼ったアクリル板。(出所:三菱ケミカル)
[画像のクリックで拡大表示]

 モスマイトの表面には、高さ200nmの突起が100nmの間隔で並ぶ(図2)。突起の幅が可視光線の波長(380n〜780nm)よりも狭く、空気層からフィルムに向かって連続的かつ緩やかに屈折率が変化するので、光の反射を抑えられるという原理だ。一般的なガラスや樹脂の光の反射率は、表面と裏面で4〜5%ずつ。それらの表面にモスマイトを貼れば、反射率を0.1〜0.3%まで下げられるという(図3)。

図2:「モスマイト」表面の拡大写真
図2:「モスマイト」表面の拡大写真
高さ約200nmの突起が林立している。(出所:三菱ケミカル)
[画像のクリックで拡大表示]

図3:光の反射率の比較
図3:光の反射率の比較
左が無加工のアクリル板で、右が両面に「モスマイト」を貼ったアクリル板。(出所:三菱ケミカル)
[画像のクリックで拡大表示]

 その多くが夜行性の蛾は、夜間のわずかな光を効率的に取り込むために、光の反射を抑えられる複眼に進化したと考えられている。三菱ケミカルはこの構造を模倣し、神奈川科学技術アカデミーとの共同研究によってモスマイトを開発した。

 同社は、佐藤美術館(東京都新宿区)で開催された展覧会「~現代作家70名が描く、つくる~吾輩の猫展」(2017年11〜12月)や「絵本にみる日本画」(2019年1〜3月)、「〜アーティストからメダリストへの贈り物〜ビクトリーブーケ展」(2020年1〜3月)に、モスマイトを両面に貼ったアクリル樹脂板を提供。画家や画商、学芸員から好評を得たので、額装向けの展開を強化した。

 この他の用途として三菱ケミカルは、ディスプレーやショーケース、塗装の代替などを想定する。今後も新たな用途開発と市場開拓を目指し、海外市場も視野に入れて事業を展開する。