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 東芝は、インフラ設備や製造装置の異常予知・検知と動作解析の精度を高める人工知能(AI)技術「Lag-aware Multivariate Time-series Segmentation」(LAMTSS)を開発した(ニュースリリース)。設備や装置に取り付けた複数のセンサーから得た時系列データの間に生じる時間のズレを自動で補正する。異常が発生するなどしてデータに変化が起きた時刻を、従来方式の1/10以下の誤差で検出できる。

 LAMTSSは、多変量時系列データから、複数の時系列データの間に生じる時間遅延を織り込んだ上で設備・機器の変化時刻を検出する(図)。動的計画法(解きたい問題をよりサイズの小さな等価な問題に分解することで計算時間を削減する最適化手法)に基づく動的時間伸縮法(時系列データを部分的に伸縮させる技術)により、所々に発生する微小な波形のピークのズレを自動で合わせ込み、時間のズレを補正する。人工データを用いてLAMTSSの性能を評価したところ、従来技術の1/10以下の誤差で変化点を正確に検出できたという。

 図:「Lag-aware Multivariate Time-series Segmentation」の概要
図:「Lag-aware Multivariate Time-series Segmentation」の概要
(出所:東芝)
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 LAMTSSにより、計測や制御などに伴う時間遅延を加味して、設備の異常状態をより正確に捉えられるようになる。人手で時間のズレを補正する必要がなくなるので、大規模インフラシステムのように多数のセンサーが組み込まれているケースにも対応できる。リアルタイムでの異常予知・検知に加えて、異常の根本原因の特定にも利用が可能。動作解析に適用すれば、生産性向上も図れる。

 時系列データを用いた異常予知・検知の手法には、通常は起こり得ないデータ点を検出する「外れ値検知」や、異常が起きている部分時系列を検出する「異常状態検出」、データのパターンが急激に変化する箇所を検知する「変化点検知」がある。LAMTSSは、このうち変化点検知に着目した技術。異常状態検出と変化点検知は、時間的な変化を含んでいるため扱いが難しいものの、検知精度の向上には不可欠であり、時間的変化の要素を取り入れた解析が注目されているという。

 変化点検知において課題になるのが、複数センサーの時系列データ間に生じる時間のズレだ。例えば、インフラ設備における圧力制御や速度制御では、計測・制御の結果がセンサーデータに反映されるまでに一定の時間がかかるため、データ間の振る舞いに時間遅延が発生する。数千ものセンサーをプラントの主要部に設置した場合、センサー同士の検出時刻は同期しておらず、異常が発生したときに原因の究明や対策の立案が難しくなる。また、モーションキャプチャー技術を使って製造現場における作業員の生産性改善を図る場合でも、右手と左手の動作が完全には同期していないため、同様にセンサーデータ間に遅延が生じる可能性がある。

 このようにデータ間に時間のズレが生じると、設備・機器に変化が起きた正確な時刻を把握できず、異常のタイミングを正しくとらえるのが難しい。そのため、複数センサーのデータ間に生じる時間遅延の影響を予め織り込んだ変化点検知技術が求められていたという。

 LAMTSSは、AI・データマイニング分野の国際会議であるSIAM International Conference on Data Mining (SDM) 2020で採択された。同社は今後、LAMTSSの精度をさらに高める計画。さまざまな時系列データに対する有効性を確認するとともに、インフラ・製造分野などにおける異常検知技術への展開を目指す。