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 三洋化成工業は2020年6月10日、素材系ベンチャーのティエムファクトリに出資すると発表した。ティエムファクトリは高い断熱性と超軽量を特徴とする透明断熱材「SUFA」(スーファ)の開発を進めている(図1)。今回の出資を機に両社は共同研究を始め、同製品の事業化を加速する。SUFAは、一般的な断熱材であるグラスウールと比較して「3倍」(ティエムファクトリ)の性能を持つため、自動車や住宅などへの活用が期待できるという。

図1 ティエムファクトリの「SUFA」
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図1 ティエムファクトリの「SUFA」
ティエムファクトリと京都大学が共同開発したエアロゲル。超軽量の透明断熱材で、グラスウールの3倍の性能を持つ。同物質の発見は1931年だが、高コストを理由に現在まで市販化に至らなかった。(出所:ティエムファクトリ)

 SUFAは、体積の9割以上が空気という多孔性物質のエアロゲルだ。高い透明性と1㎤当たり0.11gという超軽量を特徴とする。熱伝導率は0.012~0.014W/m・K程度で、「断熱材としての性能は世界最高レベル」(ティエムファクトリ)という。ティエムファクトリは京都大学との共同研究で「他社の1/60という圧倒的な低コスト」(同社)での生産を可能にした。

 ティエムファクトリはSUFAの適用先として、自動車の窓やボディ、住宅の窓や建材での活用を見込む。窓では「ガラスに板状のSUFAを挟み込んで使う」(同社の広報担当者)。

 自動車のボディにSUFAを採用する場合、「グラスウールと組み合わせた複合材料である『ブランケットタイプ』を想定している」(同社の広報担当者)という。一般的な断熱材であるグラスウールにSUFAをコーティングしたような構造で、熱伝導率は0.015~0.019W/m・Kである(図2)。

図2 SUFAのブランケットタイプ
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図2 SUFAのブランケットタイプ
板状のモノリスタイプ、粉状のパウダータイプ、複合材料のブランケットタイプがある。ブランケットタイプはグラスウールをSUFAの溶液に浸して製造する。(出所:ティエムファクトリ)

 住宅窓では、YKK APが20年に発売を予定する玄関ドア「未来ドアUPDATE GATE」で、両袖部分にSUFAを採用している(図3)。両袖のような部分的な利用は実現したが、現在の課題となっているのは窓などへの採用に向けた大判化だ。1m×2mほどへの拡大に加え、透明度との両立が必要となる。

図3 YKK APの「未来ドアUPDATE GATE」
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図3 YKK APの「未来ドアUPDATE GATE」
両袖部分にSUFAを採用しており、2020年度中に販売を予定する。(出所:YKK AP)

 三洋化成はティエムファクトリとの共同開発を通して、同社の強みである界面制御技術の応用やウレタンフォームとの複合化などで製品化を促進する。同社の事業企画部長である山本祐介氏は、「20年はパイロットスケール(実験規模)での共同研究が中心。21年から本格的な事業化を進めていく」と今後の計画を語った。