トヨタ自動車は2020年6月16日、数値解析用の仮想人体全身モデル「THUMS(サムス)」を2021年1月から無償公開すると発表した。THUMSは人体の形状や強度を精密に再現しており、コンピューター上でクルマの衝突試験による人体への影響を詳細に解析できる。THUMSを無償公開することで多くのユーザーに広く使ってもらい、ユーザー自身でTHUMSを改良して、成果を他のユーザーと共有するなど、利便性の向上を見込む。
THUMSは、2000年に人体の骨格をモデル化したVersion 1がリリースされ、これまでに顔面の骨の精密化、脳や内臓、全身の筋肉をモデル化した。さらに中柄男性だけでなく大柄男性、小柄女性、3~10歳の小児など、様々なバリエーションを用意した。THUMSを用いることで、クルマの開発時に衝突安全性に関わる開発期間やコストを大幅に抑えられる。
無償公開するのはVersion 4、5、6。Version 4は、骨格と脳、内臓をモデル化し、様々な年齢・性別・体格・姿勢のバリエーションを用意した。Version 5は全身の筋肉をモデル化、Version 6は内臓モデルに筋肉モデルを追加したものだ。これらは現在、JSOLおよび日本イーエスアイを通じてライセンス販売し、国内外の自動車メーカーや部品メーカー、大学、研究機関など100以上の機関がクルマの安全研究に使用している。なお、無償公開によりライセンス販売は2020年中に終了する。
トヨタの先進技術開発カンパニー・フェローの葛巻清吾氏は「自動車業界全体でのクルマのさらなる安全性向上、交通事故死傷者ゼロの安全な社会の実現の一助になれば」との思いで無償公開に踏み切ったとする。また、自動運転車など将来のモビリティーの開発でも活用を期待しているという。