東芝は2020年7月7日、車両の高度自動運転に必要な距離センシング技術「LiDAR(Light Detection and Ranging)」の新しい受光技術を開発したと発表した。これまでの「ソリッドステート式」LiDARと比較して、4倍の距離を計測できるのが特徴である。2023年3月末までに、中距離から長距離用の車載向けLiDARとしての実用化を目指す。

試作したLiDARの外観
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試作したLiDARの外観
(出所:東芝)

 LiDARは、赤外線レーザーを送出した時刻と、対象物に反射して戻ってきた時刻の差分で距離を測る技術である。従来の自動運転の実証実験に使われているLiDARは、モーターがレーザー光を回転させて全方位を観測する「機械式」だった。ソリッドステート式は、機械式とは異なり、モーターを使わずにローレンツ力によって回転する「MEMSミラー」などを使う。機械式と比べて小型化や低コスト化が可能だが、長距離性能と解像度の両立が難しいという課題があった。

 今回の提案技術は、大きく2つある。1つは、光子を検出すると電気信号を発生する「受光セル」で構成される素子「SiPM(Silicon Photo Multiplier)」を小型化した点。多数のSiPMをセンサー内に配列することができ、長距離でも高解像度な撮影を可能にした。さらに、複数の読み出し回路を1つの回路で実現することで小面積化も図った。

 SiMPの小型化は、各受光セルの隣にセルの電荷をリセットするAQ(アクティブクエンチ)回路を設置することで実現した。一般的に受光セルは、一度光子を検出すると一定時間応答できないという性質がある。そこで、AQ回路によってセル出力を強制的にリセットすることで、受光セルが応答できない時間を短縮した。これにより少ないセル数で多くの光子検出が可能となり、SiPMを小型化した。

受光セルにAQ回路を用意することで電荷をリセット
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受光セルにAQ回路を用意することで電荷をリセット
(出所:東芝)

 読み出し回路では、近距離計測用のTDC(Time to Digital Converter)と、長距離計測の際に太陽光による誤差を減らすためのADC(Analog to Digital Converter)の2つの回路をDDC(Dual Data Converter)として統合した。統合したことで、読み出し回路のチップ面積は従来の20%のサイズとなった。

ADCとTDCの機能を1つの回路で実現
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ADCとTDCの機能を1つの回路で実現
(出所:東芝)

 実証実験は受光部の画角を7°に設定して行った。その結果、従来の4倍*1にあたる200mまでの測距が可能になったという。ただし、画角を広いと太陽光による外乱が増えるため、測定距離は短くなる。画角が30°の場合は測距範囲が100m前後になるという。そのため、本製品は近距離から中距離向けセンサーだとしている。高度な自動運転での実用化に向けて、今後長距離性能をさらに高めるという。

*1 エジンバラ大学が同様のLiDARタイプで行った実験のデータと比較

実証実験で計測した結果
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実証実験で計測した結果
(出所:東芝)