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 米Qualcomm(クアルコム)は2020年7月3日、3GPPによるリリース16仕様標準化完了に向けて、関連する6つの主要技術を解説した(Qualcommのブログ)。

 リリース15では、5G最初の標準化仕様として、主にコネクティビティー機能統一に向けた取り組みが行われた。自己完結型スロット(flexible slot-based framework)は、高速大容量通信やミッションクリティカルなサービス、大量機器接続といった5Gサービスの効率的な提供を可能にした。OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing、直交周波数分割多重)は、5G NRのサブ1(1GHz未満の周波数帯)から60GHz超帯までの拡張を可能にし、ミリ波は、5Gの用途拡大に必要な容量と高速性を実現可能にした。

リリース15に向けて発明された主な技術
リリース15に向けて発明された主な技術
出所:Qualcomm
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 リリース16では、5Gのカバレッジやモビリティー、電力消費量、信頼性といった基礎技術強化と、様々な周波数帯の活用、各種業界への展開に向けて議論が進められている。以下に、今後の5Gの進化の根幹となる6つの主要技術について解説する。

4G、5Gの技術を基に生まれたリリース16の6つの主要技術
4G、5Gの技術を基に生まれたリリース16の6つの主要技術
出所:Qualcomm
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 (1)免許不要周波数帯の活用

 5Gでは、さまざまな周波数タイプや周波数帯が利用可能となり、容量拡張のみならず、各種の柔軟なサービスが提供可能となる。リリース16では、免許不要周波数帯を使った5G NR(NR-U)が盛り込まれ、免許不要帯と免許帯をセットで使うLAA(license assisted access)と、スタンドアロン(SA)の2つの運用モードが用意されている。既に運用中のLTE-LAAを使えば、迅速な5Gサービス提供が可能となり、スタンドアロンモードを使えば、免許帯が持たない事業者でも5Gサービス展開が可能になる。リリース16のNR-Uでは、免許不要の6GHz帯もサポートする。今後リリース17に向けては、免許不要の60GHz帯での運用なども検討していく。

NR-Uでは2つの運用モードと3つのシナリオを用意
NR-Uでは2つの運用モードと3つのシナリオを用意
出所:Qualcomm
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 (2)高度な省電力機能とモビリティー

 5G端末のほとんどはバッテリーで動作するため、電力効率も大きな課題となる。リリース16では、低消費電力モードでの制御信号監視を最小限にするWUS(wakeup signal)や最新のランダムアクセス処理(RACH)、キャリアアグリゲーションにて、セカンダリー搬送波が未使用時にパワーダウンする機能などを用意する。モビリティーについては、ハンドオーバー時の中断時間を最小限にするための、端末ドリブンの条件付きハンドオーバーや測定結果早期報告機能、デュアルコネクティビティー時のMCG(master cell group)通信リカバー機能などが用意されている。

端末の電力消費量を低減するWUS
端末の電力消費量を低減するWUS
出所:Qualcomm
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 (3)高精度ポジショニング

 機器の正確なポジショニングは、公共安全や屋内施設でのナビゲーションなど、様々な分野のアプリケーションに不可欠の技術だ。既存のGNSSシステムを補完するこのポジショニング機能には、屋外でも屋内でも使えるという利点がある。リリース16では、マルチセルやシングルセルでの端末ベースのポジショニングをサポートする。RTT(roundtrip time、往復遅延時間)、AoA/AoD(angle of arrival/departure、到達角度、発信角度)、TDOA(time difference of arrival、複数基地局からの信号到達時間差)などの5Gポジショニング技術を使って、PRS(Positioning Reference Signal、位置決定参照信号)を定義する。RTTを使ったポジショニングでは、ノード間の厳しいネットワーク同期が不要となり、より柔軟性の高いネットワーク展開、保守が可能となる。こうした技術により、屋内や屋外での3~10mのポジショニングが実現。リリース17では、産業向けIoT用途に向け、屋内での1m未満のさらに精密なポジショニングの検討が行われる。

5Gのポジショニング技術が新しいユースケースを支援
5Gのポジショニング技術が新しいユースケースを支援
出所:Qualcomm
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 (4)サイドリンク

 リリース16では、C-V2X(cellular-vehicle-to-everything)に向けて、5G NRベースのサイドリンクも用意されている。リリース14やリリース15では、基本的な安全機能が提供され、リリース16では、センサーを使った協調運転など、より高度な機能が追加される。高速低遅延、信頼性の高い距離ベースのマルチキャスト、分散型同期、統一化されたサービス品質管理などの技術で、自動運転や半自動運転に向け、効率と安全性を中心に機能強化されている。リリース16の5G NRベースのサイドリンクは、公共安全や商用アプリケーションなど、広範囲で利用される基礎技術となる。

信頼性の高いマルチキャスト通信を使ったサイドリンクで高度な5G V2Xを実現
信頼性の高いマルチキャスト通信を使ったサイドリンクで高度な5G V2Xを実現
出所:Qualcomm
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 (5)ミッションクリティカルな通信

 リリース16の5G NRでは、インダストリー4.0における工場自動化など、ミッションクリティカルな通信に向けた機能を追加。ミリ秒レベルの低遅延を維持しながら、より厳しい信頼性要件に対応する。主要技術の1つに、複数の基地局が連携することで、セル端における通信速度や品質を改善するCoMP(coordinated multi-point、協調マルチポイント)がある。複数送受信ポイント(multi-TRP)を利用して空間ダイバーシティを構築することで実現する。リリース16では、ミッションクリティカルな通信と高速大容量ブロードバンドが、共通の5G NRフレームワーク上で効率的に共存できる。論理チャネル優先順位付け(logical channel prioritization)や下りリンク、上りリンクで優先順位の高いものから接続するpre-emptionといった機能も用意している。

multi-TRPを使ったCoMPで高信頼低遅延通信を実現
multi-TRPを使ったCoMPで高信頼低遅延通信を実現
出所:Qualcomm
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 (6)新しいサービス展開モデル

 リリース16では、そのほか、非公共ネットワーク(non-public network、NPN)により、産業用IoTや企業用ネットワークなどへの5Gプライベートネットワークサービス導入を促進する。TSN(Time-sensitive networking)により、機械制御など、産業用IoTに不可欠な、厳しい同期や遅延時間の制限にも対応。RIM(Remote Interference Management)やCLI(Cross Link Interference)など、干渉を測定し緩和する新技術は、基地局間、移動通信端末間の干渉を緩和し、将来的に動的TDDオペレーションの実現と安定したサービス提供も可能にするものとなる。また、無線アクセスネットワークと無線バックホールを統合したIAB(Integrated access and backhaul)は、ミリ波対応基地局の無線アクセスとバックホールの両方への使用を可能にし、有線を使わないネットワークの高密度化につながる。また、リリース16では、eMTCやNB-IoT が5G周波数帯で動作し、大量機器接続に対応した5G基幹ネットワーク下で管理できるようになる。

IABでコスト効率の高いミリ波サービスが可能に
IABでコスト効率の高いミリ波サービスが可能に
出所:Qualcomm
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