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 米Loon(ルーン)は、地上20kmの成層圏を長期間飛び続ける無人飛行体「HAPS(High Altitude Platform Station、またはHigh Altitude Pseudo Satellite)」を利用する通信サービスをケニアで本格的に始めた。ケニアの西側と中央部にまたがる約5万km2をカバーする。通信速度は、下りで約19Mビット/秒(bps)に達する。利用する機体数は、約35台かそれ以上にする予定だという。今後数週間かけてこの台数を実現する。パートナーはケニアの通信事業者Telkom Kenyaで、同社の契約者に向けてサービスを提供する。

飛行するLoonの機体
飛行するLoonの機体
(出典:Loon)
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 Loonの前身は米Google(グーグル)の研究機関「X」のプロジェクトの1つ。現在は独立し、Googleを傘下にする米Alphabet(アルファベット)の子会社である。Loonはこれまでケニアで試験運用を続けていたが、今回大規模な運用に移行する。以前からケニアで実施しているテストを含めると、既に3万5000人以上が、LoonのHAPS(ハップス)を利用して通話やインターネットを利用したという。Loonはこれまで災害用として豊富な実績を持つ。今回のような非災害用途で、かつ35台ほどの機体を運用する大規模なサービスはLoonにとって初だという。

 2020年6月下旬のフィールド試験では、下りの通信速度が18.9Mbpsに、上りの速度が4.74Mbpsに達したという。遅延時間は19msとする。その後もテストを続けて、LoonとTelkom Kenyaは、音声通話とビデオ通話、YouTubeの視聴、メール、Webページの閲覧などを問題なく実行できたとする。

ビデオ通話の様子
ビデオ通話の様子
(出典:Loonの公式動画をキャプチャーしたもの)
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笑顔でビデオ通話するTelkom Kenyaの関係者
笑顔でビデオ通話するTelkom Kenyaの関係者
(出典:Loon)
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 HAPSは、高度約20km(成層圏)を長期間にわたって無着陸で飛び続ける無人飛行体である。搭載した太陽電池パネルや2次電池によって、数カ月といった長い期間、成層圏にとどまり続けて、スマートフォンなど通常の移動端末に対する基地局、あるいは他の基地局と基幹網を結ぶ中継局として利用される。

 Loonによれば、地上設備や衛星による通信でインターネットを利用できる人が増えたものの、人口の約半数に相当する38億人近くがいまだにインターネットにアクセスできない状況にあるという。インターネットアクセスの成長率も近年、鈍化しつつある。同社によれば、2007年の成長率は約19%だったものの、2018年には6%未満だったという。この状況を打破するのに、Loonが提供するHAPSが重要な役割を果たすとしている。

 HAPSにはいくつかのタイプがあり、Loonの機体は気球(バルーン)型である。可搬重量(ペイロード)が大きく大容量通信装置を積みやすい、機体の製造コストが安い、離着陸が容易といった利点がある。一方、風で動きやすく、精密な操縦や定点維持が難しいといった課題がある。そこでLoonでは、気流データを基に高度を調整するなどして、機体の行き先をある程度制御している。

Loonの機体
Loonの機体
(出典:Loon)
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