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 三菱電機は、次世代パワー半導体であるSiC(炭化ケイ素)パワーMOSFETの新しいSPICEモデルを開発した(ニュースリリース)。SPICE(Simulation Program with Integrated Circuit Emphasis)モデルとは、電子回路の動作をシミュレーションする際に使用する素子(デバイス)モデルのことだ。同社によると、「今回のSPICEモデルは、SiCパワーMOSFETの高速なスイッチング動作を業界最高の精度で模擬できる。これで、パワーエレクトロニクス機器の回路設計の効率化が可能になる」としている。

 高精度なSPICEモデルを開発できた理由は、これまで考慮していなかったSiCパワーMOSFETの物理現象を今回初めて反映させた点にある。その物理現象とは、SiCパワーMOSFETのドレイン電極とソース電極の間に印加する電圧によって、その内部に発生する寄生容量が変化するというものだ。これまでのSPICEモデルでは十分に考慮されていなかった。今回同社は、独自の実験手法を使うことで、その物理現象を詳細に分析した。分析結果をSPICEモデルに反映させた。

開発したSPICEモデルを評価
開発したSPICEモデルを評価
ドレイン電流の立ち上がり波形の実測値とシミュレーション結果を比較した。三菱電機の資料
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 同社が2020年6月16日に発表した+1200V耐圧のSiCパワーMOSFET「1200V-Nシリーズ」を使って、新しいSPICEモデルを評価した。これにより、スイッチング時におけるドレイン電流の立ち上がり波形の実測値とシミュレーション結果との誤差を従来の40%から15%に削減できたことを確認したという。今回開発したSPICEモデルには室温動作での物理現象しか反映できていない。今後は、高温動作での物理現象を測定してデータ化し、SPICEモデルに盛り込む考えだ。その後、社外への提供を目指すとしている。

 なお、今回のSPICEモデルは、2020年7月7日〜8日にオンラインで開催された「PCIM(Power Conversion and Intelligent Motion) Europe 2020」で発表した。発表論文のタイトルは「Development of an Accurate SPICE Model for a new 1.2-kV SiC-MOSFET Device」である。