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 ロームは、交流(AC)電圧波形が0Vを横切ったことを検知するIC「BM1ZxxxFJシリーズ」を開発し、2020年6月に量産を開始した(ニュースリリース)。同社は「ゼロクロス検知IC」と呼ぶ。「ゼロクロス検知ICの実用化は業界初」(同社)という。エアコンや洗濯機、掃除機などの白物家電に向ける。新製品は、AC電圧がゼロを横切るタイミングを事前に検知できるため、その情報を白物家電に搭載したマイコンなどに送り、モーターやヒーターなどをAC電圧がゼロのタイミングで止められ、「安全に停止できる」(同社)という。

AC電圧波形が0Vを横切ったことを検知するIC
AC電圧波形が0Vを横切ったことを検知するIC
ロームの写真
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 「今後、白物家電の高級機種や中級機種では、無線LAN(Wi-Fi)機能やAIスピーカー機能などの搭載が当たり前になり、電源回路の常時オンが必須になる。待機時消費電力の低減は急務である」(同社)という。これまでゼロクロス検知回路には、フォトカプラーで構成するのが一般的だった。AC電圧がゼロに近づくと、フォトカプラーのLED(発光ダイオード)が消灯するため、これを使ってゼロクロスを検出する。しかしこの手法は、消費電力が比較的大きい。同社によると、「約0.65Wを消費していた。白物家電の電源部の待機時消費電力は1.70W程度であるため、ゼロクロス検知回路だけで約40%を占めていたことになる」(同社)という。

洗濯機のゼロクロス検知回路
洗濯機のゼロクロス検知回路
左は、フォトカプラーを使った従来回路。右は、今回の新製品を使った場合である。ロームの資料
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 新製品はフォトカプラーを使わない。AC入力のライン(L)とグラウンドの間の電圧(AC1信号)、ニュートラル(N、中性線)とグラウンドの間の電圧(AC2信号)を検出し、これらの信号をデジタル演算処理することでゼロクロスを検知する。「我々は、AC1信号とAC2信号の関係を見てゼロクロスを検知する方法を発見した。詳しくは話せないが、その方法をIC化したのが今回の新製品である」(同社)とする。新製品を使えば、ゼロクロス検知回路の消費電力は0.01Wに抑えられるという。つまり、待機時消費電力を約40%削減できる計算になる。

 ゼロクロス検知の遅延時間の変動幅は最大±50μsと小さく、AC電圧に依存しない。フォトカプラーを使う手法はAC電圧が変動すると、電力損失が増大するという問題を抱えていた。このため、設計時に何らかの対策が必要だった。「電源事情が良くない国や地域では、AC電圧が大きく変動するため、ゼロクロス検知回路の設計が複雑になっていた。新製品を使えば、設計を大幅に簡略化できる」(同社)という。