NECは、鉄道の沿線検査業務を支援する「列車巡視支援システム」(以下、新システム)を実用化したと発表した(NECのニュースリリース)。営業車で撮影した映像に画像解析技術を適用し、支障物を自動で検知して列車巡視業務の効率化を図る。2020年4月から、JR九州が811系近郊型電車の2編成で運用している。今後、他の車両にも適用する予定だ(図1、2)。

図1:カメラなどを搭載したJR九州の「811系」車両
図1:カメラなどを搭載したJR九州の「811系」車両
(出所:NEC)
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図2:「列車巡視支援システム」による建築解析結果のイメージ
図2:「列車巡視支援システム」による建築解析結果のイメージ
(出所:NEC)
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カメラ映像から支障物や環境変化を検出

 新システムは、鉄道総合技術研究所(鉄道総研)が開発した「線路周辺画像解析エンジン」を活用している(2020年3月25日付の鉄道総研のニュースリリース)。同エンジンは、列車の先頭に設置したステレオカメラで撮影した映像を解析し、列車の走行に支障を来す恐れのある線路周辺の物体や沿線環境の変化などを検出する。従来は目視で確認している状態や変化の自動抽出により、保守係員の負担軽減と省力化が期待できる。

 具体的には[1]列車走行に支障を来す恐れのある物体の検出、[2]差分検出、[3]線路沿線の物体・地形認識、[4]自己位置推定、の4機能を持つ。[1]では、映像を用いた3D計測技術により、設定した空間内に存在する物体の有無を判別する(図3)。その位置を特定するための距離を、誤差率(計測値と実測値の絶対誤差/実測値)5%未満の精度で計測できるという(図4)。

図3:物体検出機能による設定枠内の物体の有無の判別
図3:物体検出機能による設定枠内の物体の有無の判別
(出所:鉄道総合技術研究所)
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図4:距離計測の精度の評価例
図4:距離計測の精度の評価例
(出所:鉄道総合技術研究所)
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 [2]では、異なる時期に撮影した2つの映像から両者の相違箇所を検出する(図5)。これにより、線路周辺の環境に変化を把握できる。[3]は、映像を元に線路沿線の構造物や人、自動車を認識(図6)。高架橋や崖の上の盛土のように高所を走行している区間なども認識し、抽出する。

 さらに[4]として、映像から得られる特徴点に基づいてカメラの姿勢・位置情報を算出する技術を開発した。これによって走行経路を推定でき、GPSなどの位置情報を補う(図7)。

図5:差分検出機能による相違箇所の抽出例
図5:差分検出機能による相違箇所の抽出例
(出所:鉄道総合技術研究所)
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図6:物体認識機能による構造物の認識例
図6:物体認識機能による構造物の認識例
(出所:鉄道総合技術研究所)
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図7:自己位置推定機能による経路の推定例
図7:自己位置推定機能による経路の推定例
(出所:鉄道総合技術研究所)
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