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 NTTドコモは2020年8月25日、5G(第5世代移動通信システム)に関する報道関係者向けの説明会を開催し、KDDI(au)やソフトバンクが2020年秋以降に始める計画の4G周波数帯の5Gへの転用について「周波数の幅は変わらないため速度は4Gと同様であるほか、4Gユーザーの通信速度が低下する可能性がある」(中南直樹ネットワーク部技術企画担当部長)と主張した。4Gの周波数帯を5Gに転用することで5Gの対応エリアを早期に大幅拡充するというKDDIとソフトバンクの戦略に対し、実態を伴わない“なんちゃって5G”になりかねないとして、けん制に出た格好だ。

NTTドコモはKDDI(au)とソフトバンクが2020年秋以降に始める計画の、4G周波数の5G転用をけん制した
NTTドコモはKDDI(au)とソフトバンクが2020年秋以降に始める計画の、4G周波数の5G転用をけん制した
(撮影:日経クロステック)
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 中南担当部長はドコモの5Gのエリア展開について、当面は総務省から割り当てを受けた5G向け周波数帯を使ったエリア整備を先行する考えを改めて表明。既に2020年6月末、全都道府県に1局以上の5G基地局を整備したほか、2021年3月末に全政令指定都市を含む500都市に広げ、同年6月末には1万局、2022年3月末には2万局を整備する予定だ。10キロメートル四方のメッシュ単位で、5G基地局が存在するメッシュ数を数える「基盤展開率」については、2023年度中に97%を実現するとした。

 そのうえでKDDIとソフトバンクが計画している4G周波数の5G転用については「5Gスマホを買って5Gエリアに入っても体感速度が向上せず、優良誤認になる恐れがある」(中南担当部長)と指摘。消費者向けに公開しているエリアマップにおいて、5G向けの周波数帯によるサービスエリアと4Gから転用した周波数帯のサービスエリアを塗り分け、周知すべきだと主張した。中南担当部長はさらに、一般的に5Gの特徴とされる低遅延についても「単純に4G周波数を5Gで使用してもネットワーク全体の低遅延化は実現されない」として、KDDIとソフトバンクによる4G周波数の5G転用では、5Gの利点を十分に発揮できないとした。

 そのうえでドコモは4G周波数帯の5Gへの転用について、5Gのスタンドアロン(SA)サービスを展開する2021年度以降、4Gから5Gへの移行により空いた4G周波数帯の空き状況を見ながら順次実施していくと表明。5GのSAサービスでは用途ごとにネットワークの帯域を切り分けるネットワークスライシング技術を適用できることから、低遅延を含む5Gの特徴を確実に提供できるとしている。