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 米Qualcomm(クアルコム)は2020年9月9日、過密した状況下でのC-V2Xの性能に関する調査結果を解説した(Qualcommのブログ)。同社は非常に混雑した条件下でのC-V2Xの動作について、5GAA(5G Automotive Association、5Gの自動車業界への応用に向けた技術開発を進める業界団体)での米Fordとの共同研究や、CAMP(Crash Avoidance Metrics Partners、C-V2Xの試験・開発を推進する自動車業界内団体)での実際の道路を何百マイルも走行する複数の車両を使った実験などを通して、調査を進めてきた。

5GAAの調査結果(PDF形式):5GAA V2X Functional and Performance Test Report
CAMPの調査結果(PDF形式):C-V2X Performance Assessment Project

 特に、CAMPとの連携試験は、C-V2XのV2V(Vehicle-to-Vehicle、車両間通信)やV2I(Vehicle-to-Infrastructure、車両インフラ間通信)が、さまざまな運転条件下で、安全性確保に十分な通信性能を提供できることを証明する、重要なステップとなる。C-V2X短距離無線通信を搭載した車は、数百メートル以内に存在する数百台もの車両が一斉に信号を送信した場合でも、近隣の車両に安全に情報を伝達できなければならない。これは、交通渋滞時のみならず、無線通信が混雑している場合も同様だ。

出所:Qualcomm
出所:Qualcomm
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 今回は、このCAMPとの検証作業に備えて、Qualcommが自動車メーカーの協力を得て事前に行った試験結果を報告している。特に輻輳(ふくそう)状態、すなわちネットワーク上で許容量を超えた通信が発生した状態で実施した主な実験の結果が注目に値する。

柔軟性の高いテスト環境を実現

 輻輳状態でのC-V2Xの制御能力を実証するために、実験室と実際の環境の両方に対応可能な、拡張性の高い試験環境設定アーキテクチャーを用意し、柔軟性の高いテスト環境を実現した。実験室には、1台のホストと1台の遠隔車両に向けて、最大576台の装置から同時に伝送負荷をかけられる環境「Vehicular Congestion Test Rack(VeCTR)」装置を配備し、それぞれが「スーパーUE」と呼ばれるモードで送信、長距離トラックに最大250台の装置を配備してテストできる環境を用意した。

実験室に配備されたVehicular Congestion Test Rack(VeCTR)
実験室に配備されたVehicular Congestion Test Rack(VeCTR)
出所:Qualcomm
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フィールド実験用に配備された装置類
フィールド実験用に配備された装置類
出所:Qualcomm
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 システム性能を包括的に把握するために、パケット誤り率(PER)、パケット間隔(IPG)、伝送時間(ITT)などの性能指標(KPI)を設け、車両安全用アプリケーションに向けたパケット送信や、短距離通信に必要な各種無線アクセス性能などを確認した。なお、これらの実験は、米国の非営利団体SAE(Society of Automotive Engineers)によって標準化された高度道路交通システム(ITS)コミュニティーの各種技術を基に構築している。

輻輳時にもC-V2Xノード間の車両安全通信が正しく機能

 今回の調査では、SAEの輻輳制御機能がPERやIPGの低減に効果的であること、輻輳時にもC-V2Xノード間の車両安全通信が正しく機能することを確認した。これは、追加検証として行った実地シミュレーション結果でも確認されている。

 VeCTRを使った実験では、SAEの輻輳制御機能により、システム負荷が低減することを確認。ホスト車両と75m離れた遠隔車両間で、平均PER3%の良好な通信が得られることを確認した。これはおよそ95dBの伝送損失に相当する。

 その後の拡張実験では、2つのデバイス間の損失を最大15dBにし、通常時と緊急時のBSMで通信性能を使い分けられることも確認。さらに1940台の自動車を用いた実地シミュレーションでも検証を行い、PERとCBR(Channel Busy Period、伝送路がビジー状態である時間)でも結果が一致した。輻輳の主な原因が、ホスト車両に最も近い車両にあることも分かった。混雑した環境でのC-V2Xの運用を現実的に評価するためには、より多くの車両が必要であるという意見もあったが、250台の車両を使えば、十分に輻輳制御プロトコルを検証できることも確認できた。

 今回の実地試験環境時では、50台の装置が、テストトラックの300m地点、600m地点で、VeCTRと同様の負荷を生成していることも確認。こうしたテストトラック上のさまざまな地点では、ほかにも4台のホスト車両と4台の遠隔車両の通信や、移動車両と静止装置間の通信など、多様なシナリオでの試験を実施している。

CAMPとの共同検証実施に向けた準備完了

 今回の実験結果をまとめると、以下のようになる。

  • C-V2Xは、実験室でも実際のフィールドでの混雑環境でも高い信頼性で動作する
  • C-V2Xは、実際の状況下での安全性シミュレーションを経て、商用展開可能と判断できた
  • SAEの輻輳制御プロトコルは、C-V2X上で適切に機能する

 以上より、冒頭で述べた今後のCAMPとの共同検証実施に向けた準備は整ったと判断する。なお、CAMPが独自に行った実験でも、上記と同様の技術的結論に達している。

 同調査結果「C-V2X Congestion Control Study」の詳細については、Qualcommのサイトから閲覧可能となっている(PDF形式の報告書)。