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 NTNは、自動車のトランスミッション向けに開発した軸受「超低フリクションシール付玉軸受」について、自動車メーカー数社から量産受注したと発表した(図1)。開発品は、新設計の接触タイプのシール(密閉ゴム)を採用し、高速回転条件下で低トルクと長寿命を両立したのが特徴。電気自動車(EV)やハイブリッド車(HEV)で使用しても、シールの発熱や異常摩耗を抑えられるという。

図1:「超低フリクションシール付玉軸受」(出所:NTN)
図1:「超低フリクションシール付玉軸受」(出所:NTN)
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 開発品のシールでは、シールリップ(軸受の内輪と直接接するシール部)のすべり接触部に円弧状(半円筒状)の微小突起を等間隔で設けた(図2)。これにより回転時、潤滑油などの粘性流体が流れるすき間が狭くなった箇所で流体圧力が発生する「くさび膜効果」が生じて、シールと内輪の摺動面の間に油膜が形成されるため、シールがわずかに浮く(図3)。その結果、引きずりトルクが減り、接触タイプのシールを採用した従来品に比べて回転トルクを80%低減できる(図4)。

図2:超低フリクションシール付玉軸受の断面(左)とシールに設けた円弧状の微小突起(右)(出所:NTN)
図2:超低フリクションシール付玉軸受の断面(左)とシールに設けた円弧状の微小突起(右)(出所:NTN)
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図3:内輪とシール部の間に発生するくさび膜効果(出所:NTN)
図3:内輪とシール部の間に発生するくさび膜効果(出所:NTN)
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図4:従来品と開発品のトルク測定結果(出所:NTN)
図4:従来品と開発品のトルク測定結果(出所:NTN)
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 同社によると、ギアの摩耗粉などの硬質異物が軸受に侵入すると軸受寿命が縮むため、トランスミッションでは接触タイプのシールを適用するケースが多い。しかし、従来の接触タイプのシールには、シール部が軸受内輪に接触して回転時に引きずりトルクが発生する課題があった。そこで開発品では、接触タイプでありながら非接触タイプ並みの低トルクを実現した。

 開発品のシールリップの突起は微小なため、潤滑油を通しても硬質異物の侵入を防げる。異物潤滑下寿命はシール無しタイプの従来品の5倍以上で、軸受自体の強度を高めて長寿命化した特殊熱処理品からの置き換えも可能だとする。

 開発品のシール周速は50m/秒以上。これは、dmn値〔軸受ピッチ円径(mm)×回転速度(rpm)〕換算で103万以上に相当し、接触タイプシールの従来品比で2倍以上に当たる。従来の接触タイプのシールは、シール部の周速限界に制約があり、EVやHEVのレベルで高速回転が必要とされる用途に対応できなかったという。