早稲田大学は、金属とプラスチックから成る立体を材料押出法(FDM)方式の3Dプリンター(アディティブ製造装置)を利用して造形する手法を開発したと発表した(図1)。早稲田大学理工学術院教授の梅津信二郎氏やシンガポール南洋理工大学准教授の佐藤裕崇氏、吉野電化工業(埼玉県越谷市)の曽根倫成氏らの研究グループによる成果。アディティブ製造技術とめっき技術を組み合わせ、融点の異なる金属とプラスチックが一体になった立体造形物の作製を実現した。
研究では、一般的なフィラメントと無電解めっきが可能なフィラメントを併用し、金属部分とプラスチック部分の位置を制御した立体造形物を造形した(図2)。
具体的にはまず、プラスチック用の3Dプリンターで材料として使われるアクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)樹脂に塩化パラジウム(PdCl2)を含有させたABS+PdCl2フィラメントを開発。このフィラメントとABSフィラメントを材料にして、デュアルノズルを搭載するアディティブ製造装置で出力し、ABS+PdCl2部分とABS部分で構成される立体を造形する。その造形物に対して無電解めっきを施すと、PdCl2部分に金属が析出し、金属部分とプラスチック部分が混在した立体造形物が得られる(図3)。
この手法は、無電解めっきによって位置選択的かつ密着性の高いめっき層を設けられる。図1のように、ニッケル(Ni)をベースとしためっきを施し、この部分に金めっきを重ねるといった加工も可能だ。
析出した金属膜のプラスチック表面への密着性が予想を上回ったことから、研究グループは今後、このメカニズムの解明に取り組むという。IoT(Internet of Things)デバイスやロボット部品などへの適用を目指す。