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ビジネスへの活用や社会実装が急速に進むディープラーニング。その活用で優れたプロジェクトを表彰する「第2回 ディープラーニングビジネス活用アワード」の結果がまとまった。大賞には日立造船。ほか、モビリティ部門賞など計8つの受賞プロジェクトを紹介する。

「第2回 ディープラーニングビジネス活用アワード」、受賞プロジェクト決まる
「第2回 ディープラーニングビジネス活用アワード」、受賞プロジェクト決まる

 大賞は、日立造船の「AI超音波探傷検査システム」というプロジェクト。石油、化学プラントや発電所などに使われる熱交換器は、つなぎ目となる溶接部で損傷などの異常が起こりやすい。溶接内部にも問題ないかをチェックするため、超音波を使った画像データを検査員が目視で判断していくのが一般的だ。もっとも、大規模施設では実に100万本分の画像データを調べるため、気の遠くなるような作業が必要だった。

 日立造船は、ディープラーニングが得意とする画像認識という技術を使って、こうした課題を解決した。検査員の代わりに、溶接内部の異常を自動的に検知する。ものづくりという、これまで日本が得意としてきた領域で、さらなる革新がディープラーニングによって期待できる点が評価された。同社の売り上げ増にもつながる実績もその評価を支えた。

 このアワードでは、ディープラーニングを使うことで新たなビジネスを創出、または既存ビジネスへの適用で収益を向上、あるいは社会課題を解決といった産業・社会的なインパクトがあるものを受賞プロジェクトに選んだ。

ドラレコは「過去の保存」から「事故の予測」へ

 続いて、5つの部門賞を紹介したい。ディープラーニングのビジネスへの応用範囲は一気に広がり、また部門によって使い方も大きく異なる。そこで第2回の2020年から、いろんな部門別に受賞プロジェクトを選定することになった。

 まずモビリティ部門賞。経路検索大手のナビタイムジャパン(東京・港)の「ディープラーニング活用の『ドライブレコーダーNAVITIME』アプリ」が選ばれた。有料のauスマートパスで提供しているスマートフォン用アプリ「ドライブレコーダーNAVITIME for auスマートパス」に、20年3月から前方車両の接近を検知する機能を追加した。過去を録画するドライブレコーダーを、衝突事故防止という未来を予測する用途へ転換するのにディープラーニングの画像認識を使った。開始から1週間で1万2000ダウンロードという実績も残した。

 次にメディア部門賞として、ヤフーの「不適切なコメント投稿を検知するAI開発」。Yahoo!ニュースのコメントで、不適切な内容を自動的に排除するのにディープラーニングを使った。従来の機械学習より3倍弱、検知数が高まったという。急速に進歩する自然言語処理のけん引役とも言える「BERT(バート)」という、米グーグル開発のモデルを応用したヤフーの先進性も評価された。

まぐろの目利きもディープラーニング

 食部門賞は、電通の「TUNA SCOPE」。まぐろの目利きでは、尾の断面を見てその良しあしを判断する。いわゆる職人技だが、その後継者不足や、新型コロナウイルスの影響で海外への派遣が難しくなっている。それをディープラーニングの画像認識を使ったスマホアプリ「TUNA SCOPE」で代替した。くら寿司はこれを使った仕入れを実施し、「極み熟成 AIまぐろ」として販売したという実績もある。

 ファッション部門賞は、ニューラルポケットの「ファッショントレンド分析AI AI-MD」である。半年後のファッショントレンドを知りたい。ファッション業界にいる人なら誰でもそう思うだろう。SNSやショッピングサイトの情報や画像データとディープラーニングを組み合わせて、同社は分析した。SDGs(持続可能な開発目標)への関心は一層高まり、衣料の廃棄抑制につながる使い方にも期待がかかる。一方、定価販売率が向上する実績も出始めたという。

 ロボット開発のイクシス(川崎市)は「社会・産業インフラの生産性向上プロジェクト」で、インフラ部門賞に輝いた。橋梁などインフラやビルのコンクリート面の損傷点検といった作業に対し、データの取得にロボットを使い、データ分析にはディープラーニングを活用、生産性を2倍にできた事例もあるという。複合的な技術の組み合わせで成果を出した点も評価された。

 このほか特別賞には、スーパーコンピューターを使わずに雨量予測の精度を高めた、日本気象協会の「JWA-AI予測」、そして、オンライン試験でのカンニング防止に使う、ユーザーローカルの「オンライン試験の不正抑止AI」の2プロジェクトが選ばれた。