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 ホンダがフォーミュラ・ワン(F1)から撤退する。2021年シーズンをもって、エンジンサプライヤーとしての参戦を終える。

 「再参戦は考えていない」――。同社社長の八郷隆弘氏は20年10月2日に開いたオンライン会見でこう断言した。F1エンジンの開発に携わってきた技術者などのリソースは、電動車両などカーボンニュートラル(炭素中立)の実現のための開発に振り向けていく。

 同社がF1から撤退するのは、今回で4度目。15年から参戦している「第4期」では、19年に復帰後の初勝利を挙げた(図1)。参戦と撤退を繰り返してきた同社だが、今回は「大きな決断」(八郷氏)とし再参戦を否定した。

図1 F1復帰後の初勝利は19年のオーストリアグランプリ
図1 F1復帰後の初勝利は19年のオーストリアグランプリ
ホンダのパワーユニット「RA619H」を搭載した車両で、Aston Martin Red Bull Racing(アストンマーティン・レッドブル・レーシング)のマックス・フェルスタッペン選手が優勝した。(出所:ホンダ)
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技術者は電動パワーユニット開発に

 八郷氏は会見で、「今回の決定は、カーボンニュートラル実現という新たな挑戦に向けた決意表明だ」と強調した(図2)。ホンダは30年までに4輪車販売の2/3を電動車両にするという目標を掲げる。そして、50年にはカーボンニュートラルを実現する計画だ。

図2 F1撤退を発表するホンダ社長の八郷隆弘氏
図2 F1撤退を発表するホンダ社長の八郷隆弘氏
20年10月2日にオンライン会見を開いた。(出所:ホンダのオンライン会見をキャプチャー)
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 目標達成に向けてホンダは、「エンジン開発を縮小しながら、電動パワーユニットに(リソースを)振り向ける」(八郷氏)方針である。その一環として、米GM(General Motors)とエンジンやプラットフォームなどを北米市場で共通化する方向で協業を拡大させると20年9月に発表していた。

 電動パワーユニット開発で中心的な役割を担うのが、20年4月に本田技術研究所内に立ち上げた新組織「先進パワーユニット・エネルギー研究所」である。電気自動車(EV)や燃料電池車(FCV)のパワーユニットや、液体合成燃料などの開発を加速させていく。