東北大学は、セルロースナノファイバー(CNF)を原料とする高強度・高じん(靱)性セルロース単繊維の新たな創製法を開発したと発表した。東北大学流体科学研究所の高奈秀匡准教授や米ワシントン大学のDichiara助教、スウェーデン王立工科大学のLundell教授らの国際共同研究による成果。新手法によってCNFの配向を制御し、繊維を一方向にそろえることで、セルロース単繊維の引っ張り強度を63%、じん性を120%高められるという。

 高奈研究室は、CNFの再合成によってセルロール単繊維にガラス繊維と同等の比強度を持たせることを目的に、研究に取り組んできた。その過程で、交流電場下で分極したセルロース繊維は静電トルクにより回転して電場と平行に配向することや、TEMPO(2,2,6,6-tetramethylpiperidine-1-oxyl radical)触媒酸化により得られるCNF(TEMPO酸化CNF)が交流電場に対して高い応答性を示すことを見いだした。一方でLundell氏らは、CNFを用いた高強度・高弾性セルロース繊維の創製法として、流れ場(流体を引き伸ばす伸長流)によって流れ方向にCNFを配向させるとともに、塩酸を利用して水素結合を促して繊維状に凝集させる手法を開発していた。

* 日本機械学会流体工学部門ニューズレター「静電配向制御によるセルロース新素材創製プロセス」:https://www.jsme-fed.org/newsletters/2017_2/no6.html#ctop

 今回の国際共同研究では、交流電場による配向制御と流れ場による配向制御、塩酸の拡散による凝固を組み合わせて、新たな繊維創製法を開発した()。研究グループは、数値シミュレーションで交流電場による配向機構を明らかにした上で実験を実施し、その効果を確認。交流電場と流れ場の併用によりCNFの配向度が0.95(完全配向は1.0)まで向上。セルロース単繊維の引っ張り強度とじん性は、それぞれ63%、120%高まっていた。

図:交流電場と流れ場を組み合わせたCNF配向法によるセルロース単繊維創製法
図:交流電場と流れ場を組み合わせたCNF配向法によるセルロース単繊維創製法
(出所:東北大学)
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 強度が高く軽量なCNF本来の材料特性を示す単繊維を得るには、CNFを繊維長軸方向に配向させる必要がある。しかし、微細なCNFはブラウン運動によって強く拡散するため、従来の方法では配向制御が難しかった。研究グループは新手法の応用によって、CNFの特性を生かした新材料の開発が期待できるとしている。