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 TDKは、車載機器に向けた電源用インダクター「BCL322515RTシリーズ」を開発し、2020年10月に量産を開始した(ニュースリリース)。車載機器に搭載するDC-DCコンバーターのインダクター(コイル)として使える。車載用受動部品の品質規格「AEC-Q200」に準拠する。具体的な応用機器は、ADAS機器や各種電子制御ユニット(ECU)などである。

車載機器に向けた電源用インダクター。
車載機器に向けた電源用インダクター。
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 特徴は、金属粉と樹脂を混ぜて成形した金属磁性体をコア材料に採用したにもかかわらず、外径寸法が3.2mm×2.5mm×1.5mm(3225サイズ)と小さく、インダクタンスが47μHと高いことである。これまで、3225サイズで47μHと高いインダクタンスが必要な場合は、フェライトをコア材料に用いたインダクターを使うのが一般的だった。金属磁性体を使う同社のインダクターでは、3225サイズの場合、最大10μHの製品しかなかった。しかし、フェライトを使うインダクターは一般に、流せる電流が比較的少なく、漏れ磁束が多いという欠点を抱えている。同社によると、「車載機器では、高機能化で必要な電流が増えている。さらに、狭いスペースに複数のECUを搭載する必要性が高まっており、漏れ磁束の影響が問題になっていた」という。そこで、流せる電流が多く、漏れ磁束が少ない金属磁性体を使うインダクターに対する期待が高まっていた。

 しかし、金属磁性体を使うインダクターは、得られるインダクタンスが低いという欠点を抱えている。そこで同社は、2つの改良を加えることで、実装面積が3225サイズで、インダクタンスが47μFと高いインダクターの開発に成功した。「金属磁性体を使ったインダクターで、47μH品の投入は業界初」(同社)という。

 1つ目の改良は、樹脂に混ぜる金属粉の最適化である。金属粉の材料の詳細は明らかにしていないが、「特に目新しい材料を使ったわけではない。複数の金属粉を採用し、それらの配合比を最適化することで透磁率を高めた」(同社)と説明している。

 もう1つの改良は、インダクターの製造工法である。金属磁性体と巻線(ワイヤ)を組み合わせたものに低い圧力を掛けるだけで組み立てる工法を新たに開発した。従来は、組み立て時に掛ける圧力が高く、ワイヤの径がつぶれる危険性が高かった。ワイヤはCu(銅)線を絶縁被膜で覆ったものであり、径がつぶれると絶縁被膜の薄い場所ができてしまう。そこに金属粉が刺さることで、短絡(ショート)が発生していたという。このため従来は、高い圧力を掛けてもつぶれない太いワイヤを使わざるを得ず、巻き数を稼げなかったのでインダクタンスを高められなかった。今回は、低い圧力で組み立てられるため、70μmと細いワイヤを採用できた。このため、巻き数を増やしてインダクタンスを高めることが可能になった。2つの改良のうち、インダクタンスを高めることにより大きく寄与したのは「新たに開発した工法」(同社)という。

今回の新製品「BCL322515RTシリーズ(BCLシリーズ)」の位置付け。
今回の新製品「BCL322515RTシリーズ(BCLシリーズ)」の位置付け。
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 漏れ磁束は、フェライトを使ったインダクターに比べて少ない。なぜならば、金属磁性体は柔らかく、隙間が一切ないモノリシック構造を実現できるからだ。一方のフェライトは硬い。このためフェライトで作成した複数のコアを組み合わせるので、どうしても隙間ができてしまい、そこから磁束が漏れていた。今回の新製品のピーク漏れ磁束は102.6dBμVと低い。フェライトを使う同社従来のインダクターは104dBμVだった。

 インダクタンスが30%減少する電流(飽和電流、Isat)は0.72A(標準値)。インダクターの温度が40℃上昇する電流(Itemp)は0.67A(標準値)である。直流抵抗(DCR)は1.40Ω(最大値)と小さい。「このためDC-DCコンバーター回路に適用すれば、変換効率を高められる」(同社)という。耐圧は+40Vを確保した。このため+12Vの車載バッテリーの出力を直接入力するDC-DCコンバーターに使える。このほかの特性は、下表の通り。サンプル価格は50円である。

新製品の特性表。飽和電流(Isat)の最大値は0.57Aで、標準値は0.72Aである。
新製品の特性表。飽和電流(Isat)の最大値は0.57Aで、標準値は0.72Aである。
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 今後同社は、3.2mm×2.5mm×1.5mm(3225サイズ)で、インダクタンスが異なる複数のインダクターを製品化する計画である。例えば、33μH品や22μH品、15μH品、10μH品など、新製品よりもインダクタンスが低い製品を追加する。2021年初頭までには、すべての製品が出そろう予定だ。さらに高インダクタンス化にも取り組む考えである。現時点では検討段階だが、実装面積は3.2mm×2.5mmのままで、実装高さを1.5mmより若干増やすことで100μHのインダクタンスを得られることを確認済みだ。「これまで100μHのインダクタンスが必要な場合は、フェライトを使った実装面積が4.0mm×4.0mmや5.0mm×5.0mmのインダクターを用意していた。金属磁性体を使うインダクターで3225サイズの100μH品を実用化できれば、実装面積を削減できる」(同社)。