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 早稲田大学と静岡大学は、「世界一長尺な高密度カーボンナノチューブ(以下、CNTフォレスト)の成長に成功した」と発表した。早稲田大学理工学術院総合研究所 次席研究員の杉目恒志氏と静岡大学工学部電子物質科学科の井上研究室の共同研究で実現したもの。新たな成長方法の開発により、これまで2cm程度が限度とされていたCNTフォレストの成長を、14cmまで延長できた。

* 早稲田大学・静岡大学のニュースリリース:https://www.shizuoka.ac.jp/cms/files/shizudai/MASTER/0100/b4vmXmI4.pdf

 CNTを成長させる方法として一般的な化学気相成長(CVD)法をベースとする新方法を開発した(図1)。すなわち、基板上に触媒を担持し、原料ガスと反応させてCNTフォレストを成長させる。ただし原料ガス中に、有機金属であるフェロセンと、アルミニウム(Al)イソプロポキシドを極微量添加するのが新手法の特徴だ。

 フェロセンは鉄(Fe)を、Alイソプロポキシドはアルミニウム(Al)を供給する原料になる。このFeとAlがCNTの成長中に起こるナノ粒子触媒の構造変化を抑える。

図1:成長中のCNTと成長後のCNTフォレスト
図1:成長中のCNTと成長後のCNTフォレスト
(a)が成長中、(b)が32時間成長後のCNTフォレスト。基板上にナノ粒子触媒を担持し、CNTフォレストを成長させる。(出所:早稲田大学、静岡大学)
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 触媒には、近年開発されたガドリニウム(Gd)添加触媒(Fe/Gd/Al2Ox)を採用した。CNTの成長に有効とされるAl酸化物(Al2Ox)上のFe触媒にGdを微量添加することで、触媒寿命を延ばした。

 さらに研究チームは、従来のホットウォール型CVD法に代わる方法として、コールドガスCVD法を開発した。ホットウォール式は、反応管全体を加熱するため原料ガスも加熱され、気相中で化学反応が進行する。それに対してコールドガスCVD法は、反応する基板や触媒のみを加熱するのでガス温度が低く保たれ、化学反応が抑制される。CNTを室温付近に保つことで、CNT上への不純物の堆積も抑えられるという。

触媒の構造変化を抑止し長持ちさせる

 CNTの成長条件を詳細に検討したところ、Fe原料はFe触媒が下地に拡散して無くなる現象を防ぎ、Al原料は触媒の横方向の構造変化を防いでいると分かった。Fe原料やAl原料を供給しなかったときは成長が1時間程度で止まるのに対して、それらを供給した場合は、成長が26時間程度持続した(図2)。

図2:CNTフォレストの成長曲線
図2:CNTフォレストの成長曲線
青色がFe・Al原料を添加した場合、ピンク色が添加しなかった場合。(出所:早稲田大学、静岡大学)
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 従来、集合体でない1本のCNTを50cm程度に成長させる手法は開発されていたものの、CNTの密度が10万倍以上のCNTフォレストについては、最長でも2cm程度までだった。これまでの研究で、CNTフォレストの成長の停止には触媒の構造変化が関わっていると分かっていたという。そこで研究チームは、触媒の構造変化を止めればCNTの成長を継続でき、長尺なCNTを得られると考えた。

 研究チームは、新開発の手法で作製したCNTについて電気特性評価を実施した。その結果、密度が銅(Cu)の1/7と軽量でありながら、Cuと同程度の許容電流密度を持つことが明らかになった。今後は、CNT成長のメカ二ズムを詳細に解明し、手法の改良につなげる計画。長尺なCNTを高効率に得られれば、用途が広がる上、大量生産によるコスト低減も期待できる。