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 芝浦工業大学工学部電気工学科助教の重宗宏毅氏らは、紙が自動で折り畳まれて立体構造を形成する手法を開発した。セルロースと薬液の反応を利用したもので、一般的なインクジェットプリンターを使って濃度の異なる複数の薬液を紙に印刷すると、折りたたむ順序や位置を制御できる。電子機能を組み込むことで、柔らかいロボットも実現可能という。

図:印刷によって指定した順序で紙が折りたたまれる例
図:印刷によって指定した順序で紙が折りたたまれる例
[A]は、1、2、3の順序で紙が折り畳まれる様子。[B]は、紙の表裏にパターンを印刷したもの。[C]は、紙の曲がりを利用してはしごを傾けたり掛けたり、引っ込めたりする様子。(出所:芝浦工業大学)
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* 芝浦工業大学のニュースリリース:https://www.shibaura-it.ac.jp/news/nid00001333.html

 研究チームは、植物の駆動メカニズムを模倣し、紙が自動で折り紙構造を作り出す手法を確立した。この手法では、インクジェットプリンターのインクカートリッジに薬液を入れ、紙に直線を印刷する。このとき、薬液濃度の違う複数のカートリッジを用意して印刷することで、折り目の位置や折るタイミングを制御でき、線を起点に紙が自動で折りたたまれる。カッティングプロッターを使えば、曲面や多数の折り目を持つ立体などさまざまな構造を作製できる。

 具体的な折りたたみのメカニズムはこうだ。紙は水溶性の薬液を吸収して膨張し、印刷面に対して凸状に変形した後、薬液の浸透に伴い収縮して凹状に変形し、曲がる。溶液の浸透した部分のみが反応し、薬液の量(濃度)に応じて折り曲がる角度が変化する。研究チームは、薬液の濃度と折りたたみにかかる時間の関係を解明し、印刷する線幅や紙の厚さ、湿度、紙目、印刷量をパラメーターとして折り曲がり角度の制御を実現した。カートリッジを増やしてさまざまな濃度の薬液を用いれば、多くの動きをプログラミングできる可能性がある。

 この手法の利点の1つは、セルロースと溶液の物理化学反応の利用により、外部からの操作がいらない点にある。平面形状から自律的に立体構造を形成する手法(Self-folding)はさまざまな材料をベースに提案されているが、従来は電流を流したりオーブンに入れたりと、外部からエネルギーを供給して曲がりを誘発していた。

 既に研究チームは、一般的なプリンターで紙に電気配線を印刷する方法を発表しており、今後は、この技術と新手法の組み合わせにも取り組む。1台のプリンターに構造形成用のインクと配線印刷用のインクカートリッジを装填して印刷すれば、立体配線基板の作製が期待できる。用途としては、柔らかくもろい製品を保護する衝撃吸収材や、医療用の使い捨て治具、ウエアラブルセンサー、アクチュエーターなどを想定する。その他、短時間で簡単に作製できる電子部品や柔らかいロボットなどの実現を目指す。