東北大学と山形大学は、衝撃エネルギーを高効率に電気エネルギーへ変換する軽金属複合材料を開発したと発表した(図)。東北大学大学院環境科学研究科(工学部材料科学総合学科)教授の成田史生氏のグループと、山形大学学術研究院(大学院理工学研究科担当)教授の村澤剛氏のグループによる研究で実現した。2本の磁歪ワイヤをよってアルミニウム(Al)合金に埋め込む構造として、単位体積当たりの出力電圧を増やした。
研究グループは、東北特殊鋼の協力を得て直径0.5mmの鉄コバルト系磁歪ワイヤ(以下、Fe-Coワイヤ)を作製。さらに、同ワイヤ2本をより合わせて1本のワイヤとし、Al合金に埋め込んだ。鋳型・治具の材料と形状の工夫によって、より合わせたワイヤ数本を直線状に立てたままでAl合金を鋳造できるようにしたという。併せて、作製時の温度や時間などの条件を検証し、Fe-CoワイヤとAl合金母材の界面の制御を可能にして、強度も高められた。
開発した複合材料に変異速度が2mm/秒の衝撃荷重を与えたところ、1回の衝撃で1cm3当たり約0.2Vの出力が確認できた。この値は、磁歪ワイヤをよっていない複合材料の4倍。バイアス磁場の方向を工夫すれば、さらに出力は増大し、10倍以上の電力も期待できるという。研究グループは、IoT(Internet of Things)で用いる無線センサー向け電源としては「十分な電力」としている。
研究グループによると、逆磁歪効果を利用した振動・衝撃発電複合材料の母材は従来、エポキシ系の材料に限られていた。それに対して新開発の複合材料はAl合金を母材とするので、大きな衝撃荷重下や比較的高温な環境下でもエネルギーを回収できるという。例えば、Al合金製の自動車部材や輸送機器のエンジン駆動部から電気信号を得て、これらの部品に電源機能を付与できる可能性がある。