リコーは、超臨界二酸化炭素(CO2)を使って均一に発泡させたポリ乳酸(PLA)シート「PLAiR(プレアー)」のサンプル出荷を開始する。発泡倍率と厚さを変えられるため、緩衝・梱包材料や容器などのさまざまな用途に対応できる(図1)。
PLAiRの作製には、工場から排出されたCO2を回収し、超臨界状態にして利用する(図2)。具体的には、超臨界CO2の雰囲気下にPLAとフィラーを投入して混練し、PLA中にフィラーを均一に分散させる。このフィラーを核にして発泡させると、直径が数十μmの均一な気泡を得られるという。出来上がったシートは、薄くても破れにくく、柔軟性がある。
従来、PLAは一般的な方法では発泡しづらく、発泡させるには化石由来の樹脂や伸長剤を併用する必要があった。だが、この方法で発泡させても気泡の制御は難しく、バラつきが大きい。加えて気泡の直径が数百μmと大きいため、気泡間の狭小部からシートが破断しやすいという課題があった。
それに対してPLAiRは、強度としなやかさを両立できる上、発泡倍率の制御も可能だ。同社は、3種類の発泡倍率のサンプルを用意しており、それぞれ想定する用途が異なる。例えば、発泡倍率を20~25倍に設定した場合はシートの厚さが2~3mmで、緩衝材や梱包材としての使用に向く。発泡倍率が10~15倍では厚さが1~3mmとなり、食品容器に向く。発泡倍率を2~3倍に抑えたシートの厚さは0.5~1.5mmで、各種トレーや容器に使える。
2020年9月には、同社が提案した「独自の発泡技術による軽量でしなやかな発泡PLAシート素材開発に関する実証」が環境省の「令和2年度脱炭素社会を支えるプラスチック等資源循環システム構築実証事業」(補助事業)に採択された。同事業では、柔軟性や耐久性、生分解性などの物性を評価する他、試作装置を導入し、製造コストを大幅に低減するための製造プロセス技術の開発に取り組む。同事業を通じて同社は、PLAiRの早期の実用化を目指す。