ナ・デックスとNEC通信システム(東京・港)は、工場・倉庫において部品や原材料(以下、資材)の位置情報を高精度に捉えるシステム「マーカーロケーションシステム」を開発し、ナ・デックスが提供を開始した。入庫した資材の種類を自動で認識し、その位置情報を関連付けるため、保管スペースを資材の種別によって分けておかなくても「どこに」「どの」資材が保管されているかを把握できる。
新システムには、ナ・デックスの「スマートマテリアル管理システム(入出庫管理)」と、NEC通信システムが開発した「NEC マーカー位置測位ソフトウェア」を組み合わせた(図)。スマートマテリアル管理システムは、資材・棚・現品票に貼り付けたQRコードの読み込みやピッキングリストの表示、先入れ先出し支援など、入出庫管理に必要な機能をまとめてパッケージ化したシステム。工場レイアウトや棚種類レイアウトを作成し、資材の位置を直感的に把握できる。
一方のNEC マーカー位置測位ソフトウェアは、壁面や柱、資材に取り付けた複数のマーカーを撮影し、カメラの位置と資材の位置を測位する。AR(拡張現実)で用いられる、カメラの位置と姿勢(角度)を推定する技術を応用した。屋内外にある資材の保管位置を、1m以内の精度で把握できる。
新システムでは、マーカーを基準にした測位で資材の入庫場所をリアルタイムに検出する。入庫数量をデータベースで管理すれば、どこにどの資材が保管されているかを可視化し、フロアマップ上で出庫指示を出せるようになる。
この仕組みにより、保管スペースを資材の種類ごとに区分しない「フリーロケーション」の実現が可能。任意の場所に任意の資材を置いてスペースを有効に使える。リアルタイムな情報を可視化・検索できるので、ピッキング作業や棚卸し作業の効率化も図れる。
工場などでは従来、資材を種別に保管しているが、それらの在庫数は生産量や生産品目に応じて変化するため、余裕を持たせてスペースを確保しておかなければならない。保管スペースが不足した際に空きスペースを一時保管場所として利用し、その資材が必要なときにすぐに見つからないというケースもある。新システムによって資材の位置情報を可視化することで、こうした課題の解決を図る。
新システムは、マーカーの扱いが簡単なのも利点。ビーコンやGPSを利用する位置測位手法と異なり、電池交換などのメンテナンスの手間も発生しない。防水加工したマーカーを使えば屋外での位置推定も可能で、屋内外の資材を一括管理できる。
ナ・デックスとNECは今後、アプリケーションの開発と検証を進め、新システムの適用範囲を拡大する。例えば、AGV(無人搬送車)やフォークリフト、作業者などの移動体の動線を管理する、動線と運搬荷物情報を連係させるといった利用を想定している。