エヌエスティ・グローバリスト(東京・豊島)は山梨大学工学部コンピュータ理工学科教授の茅暁陽氏らと共同で、人工知能(AI)を活用して回転式アナログメーターの数値表示を読み取る技術を開発した(図1)。桁ごとに0~9の数値を記入した文字板が動いて表示が変わっていく回転式アナログメーターは自動読み取りが難しく、これまで巡回点検作業に人手が必要だったが、メーターを交換せずに自動化する「レトロフィットIoT」の実現に役立つ。
新技術は、数枚の写真からでも深層学習に必要なデータを自動生成できるのが特徴。最新の深層学習モデルと組み合わせれば、さまざまな環境に設置されている回転式アナログメーターをカメラで撮影し、自動で表示値を読み取れる。「0」から「1」へ変わる直前、すなわち「0」の文字の下半分と「1」の上半分が見えているような中間状態も認識する。
同社は従来、各種メーターをカメラで撮影してクラウドに送信するサービス 「SR-METER」を展開している(図2)。しかし、回転式アナログメーターの場合は、設備の動作環境によってカメラの撮影角度や照明条件が制限され、鮮明な画像を得られないことがある。さらに、数値が変わる際の中間状態の読み取りが画像認識では難しいという課題もあり、サービスの対象にしていなかった。低画質の画像から認識するには深層学習技術が有効とされるものの、現場によっては回転式アナログメーターの上位けたが変わるまでの間隔が数年単位になるケースがあり、上位けたも含めた学習データの確保が難しいという課題もあった。
工場やプラント設備の保守点検では従来、作業員が現場に出向いて巡回しながら複数のメーターを確認・転記・集計していた。この場合、人為的なミスが発生する恐れがあるのに加えて、最近では自然災害やコロナ禍で現場へ出向くのが難しい状況もある。さらには、作業員の高齢化や人材不足、設備の経年劣化による停止リスクの増大と維持コストの増加といった問題もある。
同社は新技術の現場での実証を進めて、SR-METERの対象に回転式アナログメーターを加えて適用範囲を広げる予定だ。