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 米Solid Powerは米国時間の2020年12月11日、重量エネルギー密度が330Wh/kgの全固体電池のパウチ型セルを開発し、評価用にサンプル出荷を始めたと発表した。セルの容量は20Ahで、正極/電解質/負極の層22層からなるという。

 同社は20年10月に容量が2Ah、層数が10層で重量エネルギー密度が320Wh/kgの全固体電池の試作を始め、21年に製品化、26年には車載用電池として出荷する計画を発表していた。今回は大容量化と重量エネルギー密度の若干の向上を果たした格好だ。想定利用温度は室温~70℃だとする。

左が今回発表した20層、20Ahのセル。右は2020年10月発表の10層、2Ahのセル
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左が今回発表した20層、20Ahのセル。右は2020年10月発表の10層、2Ahのセル
(写真:Solid Power)

 同社は今後、重量エネルギー密度を400Wh/kgにまで高める方針。また、22年初めには正式な車載用途向けの性能評価プロセスを始める計画だという。

 Solid Powerは12年に設立された大学(米University of Colorado)発のベンチャー企業。これまでにドイツBMW、日本の三桜工業、韓国Hyundai CRADLE、同Samsung Venture Investment、米Ford Motorなどの出資を受けている。

遅い充放電なら問題がないが…

 Solid Powerの全固体電池は固体電解質に硫化物系材料、負極に金属リチウム(Li)を用いている。金属Liの負極は、一般には充放電を繰り返すと「デンドライト」と呼ばれる棘(とげ)のようなLiの析出物が負極から正極に向かって成長し、容量が低下。最悪の場合、それが正極に達して短絡し、発火事故などにつながる課題がある。

 Solid Powerはそれへの対策の詳細は明かしていないが、今回、2層の試作セルに対する充放電サイクル時のデータを公開し、少なくとも充電や放電がそれぞれ20時間というゆっくりした充放電であれば250サイクルまでは大きな問題がないことを示した。容量は当初のサイクルで初期値の70%前後にまで低下するが、そこから充放電サイクルが増えるにつれて容量は徐々に回復するもようだ。

2層の試作セルの充放電サイクル時の容量
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2層の試作セルの充放電サイクル時の容量
(図:Solid Power)

 一方、より速い充放電にはやや課題があるようだ。具体的には、容量2Ahのセルにおいて温度29℃で放電レートを次第に高めると放電容量が大きく低下。1時間で放電する(1Cの)場合で、放電容量は遅い放電時の数%にまで低下した。ただし、放電レートを遅くすると容量はほぼ回復。また、温度を高めると低下幅は短くなり、70℃では20分放電(3C)でも遅い放電時の80%と低下幅は小さかったとする。

 上とは別の2cm2と小さなセルでは、温度29℃で普段は通常充電、ときどき急速充電〔具体的には、5時間(C/5)充放電を4サイクル、次の1サイクルは30分充放電(2C)〕というパターンを繰り返した場合は、100サイクル後の容量維持率は約97%という結果だった。この容量の低下傾向が続く場合は1000サイクル後に容量は初期値の約74%、3000サイクル後は同40%となる。民生品なら問題がないが、EV向けとしてはこのままでは厳しい。