宇宙航空研究開発機構(JAXA)とヤマトホールディングス(YHD)は、空を活用した物流サービスの実現に向けて、大型貨物ユニット「PUPA(ピューパ)8801」の空力形状を開発した(図1)。YHDが企画したコンセプトモデルについて、JAXAが数値シミュレーションを実施。航空技術の知見に基づいて検証するとともに形状改善を提案した。

図1 「PUPA8801」の運用イメージ
図1 「PUPA8801」の運用イメージ
物流eVTOLとトラックで貨物ユニットを共用し、航空/陸上輸送間の切り替えを合理化する。PUPA8801の搭載可能質量は、PUPAシリーズで最大の約400kg。(出所:YHD、Future iNCITE!)
[画像のクリックで拡大表示]

 YHDは、航空/陸上輸送間の切り替えを合理化し、荷役作業などにかかる時間と作業の削減を目的として、貨物ユニット「PUPA」(Pod Unit for Parcel Air-transportation)の開発を進めている。その空力形状は、航空での輸送手段である物流電動垂直離着陸機(物流eVTOL)への装着と地上輸送手段への搭載の両方の要求を満たす必要がある。具体的には、eVTOLへの装着を考えると、飛行に適した空力形状でなければならない。一方、陸上輸送では、直方体に近い形状が標準パレットなどの既存の陸送ユニットと共存しやすい。

 そこで同社は、陸上輸送などの物流ノウハウと、自社で取り組んできた物流eVTOLの研究成果から導き出した条件に基づき、PUPAのコンセプトモデルを企画してきた。2019年に米Bell Textron(ベル・テキストロン)と実施した実証試験では、PUPAを装着した状態での自律飛行に成功している。

 JAXAは今回、搭載可能質量が約400kgとPUPAシリーズ最大の同8801のコンセプトモデルに対して、流体解析ツール「FaSTAR(ファスター)」をはじめとする数値シミュレーション技術を用いて解析し、形状の改善を提案した。FaSTARは、他の流体解析ツールに比べて数倍から10倍程度高速な解析が可能という。JAXAとYHDは、仮説の構築と検証を迅速に繰り返すことで、約4カ月で空陸両用のニーズを満たす形状を開発し、成立性を実証したという(図2)。

 YHDは、今回の成果を踏まえて物流eVTOLシステムの開発を続け、2020年台前半のサービス開始を目指す。一方JAXAは、数値シミュレーション技術と解析ツールを用いた次世代エアモビリティー向け技術の波及的活用を推進していく。

図2 PUPA8801の空力形状の変遷
図2 PUPA8801の空力形状の変遷
当初のコンセプトモデルに対して運用に適した基本形状を模索し、空気抵抗の低減と容積の増大を図った。(出所:YHD、JAXA)
[画像のクリックで拡大表示]