超越化研(横浜市)と東京大学は、紙の強度と耐水性を高められるシリカコーティング技術「超越コーティング」を開発したと発表した(図1)。同社代表取締役の岩宮陽子氏と高エネルギー加速器研究機構名誉教授の川合將義氏、東京大学名誉教授の柴山充弘氏、東京大学物性研究所技術専門職員の浜根大輔氏、同教授の廣井善二氏による研究の成果。同コーティングを施した紙や紙製品は、プラスチック製品のように使用できる一方で、使用後に自然環境で分解して有害な物質を残さないという。
* 超越化研と東京大学のニュースリリース(PDF)
新技術ではコーティング液にコピー用紙や和紙を浸した後、常温で30分程度乾燥させると、紙を構成する直径数十μmのセルロースファイバー表面に、シリカ(二酸化ケイ素)などによるコーティング層が厚さ3μm程度で均一に形成される(図2)。使用するコーティング剤は、有機ケイ素アルコキシドのメチルトリメトキシシラン(CH3Si(OCH3)3、MTMS)を主成分として、少量のチタンテトラプロポキシド(Ti[OCH(CH3)₂]₄、TPT)などを反応促進剤として含む、低粘度の液体だ。
具体的には、反応は以下の通りに進む(図3)。まず、液剤中のMTMS分子が紙や大気中に存在する少量の水分子によって加水分解し、Si–OHのシラノール基が生じる。次に、2つのMTMS分子のシラノール基同士が脱水反応によってシロキサン結合を作ってつながる。さらにMTMS分子のシラノール基は、セルロースファイバー表面の水酸基と脱水反応し、固定される。