紙の柔軟性を保ちながら強度と耐水性を向上

 この一連の反応は、反応促進剤であるTPTの助けを得て自発的に素早く進行するため、反応中に紙が劣化しにくい。加えて、形成されたシリカ層は強固なSI-O-Siのシロキサン結合から成るネットワーク(シロキサンネットワーク)を持ち、セルロースファイバーに強く化学結合するため、紙の機械的強度が増す。

 東京大学未来ビジョン研究センター特任教授の鈴木真二氏らは、宇宙から紙飛行機を飛ばすことを目標とした研究の一環で、超越コーティングを施したシャトル形紙飛行機を使って風洞実験を実施した。その結果、マッハ7の風速でも紙飛行機の形状が保たれたという。

 同コーティングによって強度が高まる一方で、紙が元来持つ柔軟性を維持できる。それは、シロキサンネットワーク中にナノサイズの隙間が存在し、変形を許容するためだ。シリカ皮膜は無色透明であり、コーティング後も紙は元の風合いを保つ。

 さらに、シロキサンネットワーク中のナノサイズの隙間に多くのメチル基が残り、はっ水性が発現する。紙製のストローにコーティングを施し、3日間水に浸したところ、形状や強度に変化はなかったとする。

 同コーティングは、紙以外にも適用できる。例えば、木材に施すと耐候性が向上する(図4)。ナノ空隙に触媒や化学物質を入れると、基材の特性を損なうことなく、用途に応じてさまざまな機能性を持たせられる。

図4:超越コーティングを施した木材
図4:超越コーティングを施した木材
耐候性が向上した。(出所:超越化研、東京大学)
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