既存技術からコストと環境負荷を抑制

 研究チームによると、既存のコーティング技術にはコーティング剤が有害だったり、大きな設備投資を要したりする課題があった。シリカは化学的に安定で無害であり、不安定な物質を利用するためのコーティングに適している。しかし、コーティングに用いられる従来のゾル-ゲル法は、多量の水と酸または塩基触媒を必要とするので、それらよって劣化しやすい紙のコーティングには向かない。加えて、コーティング後に残留する酸や塩基が環境汚染の原因となるという欠点もあった。

 そこで研究チームは、以下の4つの条件を満たす技術を目指して開発を進めた。1つ目は、最小限の水と触媒を使い、室温または低温で短時間にコーティング反応が進行すること。2つ目は、安価なコーティング剤を紙に塗布するだけで、セルロース繊維表面に均一なシリカ皮膜が形成されること。浸漬法に比べて簡便な塗布法を使えれば、コストを抑えられる上、紙製品の形状を損なう恐れも少ない。3つ目は、コーティング皮膜が適度なはっ水性と柔軟性を備え、紙から剥離しにくいこと。そして4つ目は、コーティング紙が生体に無害であり、環境中で自然に分解して汚染源とならないことだ。

 研究チームは、こうした条件を満たす超越コーティングの適用により、さまざまな用途でプラスチック製品から紙製品への置き換えが可能だとみる。例えば、水に強い段ボール紙や焼却可能な農業用マルチシート(うねを覆う資材)、廃棄可能なシャーレなど、生活用品だけでなく工業や農業、医療分野向け製品での応用も見込む。それらを廃棄した後も環境負荷が少なく、プラスチックごみによる海洋汚染などの問題解決を図れるとしている。