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 米Qualcomm(クアルコム)は2021年1月4日、混雑した高速道路上でもセルラーV2X(C-V2X:Cellular Vehicle to Everything)が快適に動作する理由を自身のブログで解説した(Qualcommのブログ)。以下はその概要となる。

 従来のDSRC(Dedicated Short Range Communication)と比較した際のC-V2Xサイドリンクの性能については、混雑した通信状況下で、いくつかの疑問が提起されている。主な論点として、C-V2XノードのSPS(semi-persistent scheduling、半永続スケジューリング)によるコリジョンで連続的損失が発生し、IPG(inter packet gap、パケット間ギャップ)が長引く(ロングテール)ことが指摘されている。BSM(Basic Safety Message、基本安全メッセージ)送信時にこのロングテールが発生すれば、多くの車両がタイムリーに安全メッセージを受信できない。

出所:Qualcomm
出所:Qualcomm
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 DSRCと比較時のC-V2Xのロングテールは、次の場合に発生する。

 (1)送信周期が100msの倍数にほぼ等しい場合

 (2)C-V2Xプロトコル標準の不完全な実装

 (3)DSRCのリンクバジェットに有利な非常に寛容な経路損失モデルの使用

 しかし、実在の機器類を使用した実際のシナリオに基づくと、送信周期はシミュレーションで実施される100msの倍数にほぼ等しい状況にはならない。また、SAE J 3161/1(LTEでのV2X/V2V向け安全規格)でC-V2Xに導入されたミューティング機構は、周期が100msの倍数に最も近い場合でも、ロングテールを排除できる。このため、この規格に準拠したC-V2Xでは、ロングテールは発生しない。経路損失モデルについても、ITU-R P.141のモデルを使用したシミュレーションでは、混雑した高速道路での車両によるシャドウイング損失を考慮していない。一方で、3GPP TR36.885の経路損失モデルは、より厳密なシミュレーションを可能にする。

 今回は、この3GPP TS 36.885の見通し内(LOS)高速道路経路損失モデルを使って行った、6車線の高速道路5000mにC-V2X 装備の車両2000台を分布させるシナリオでのシミュレーション結果を基に、上記を例証する。

 図1はC-V2XにJ3161/1ミューティング機構を搭載した場合と搭載していない場合の帯域幅10MHzと同20MHz、車両間隔200mでのIPG性能を示すものとなる。ここでIPGは、190m〜210mの範囲内の車両から受信した際の受信成功時間と、前回の同一車両からの受信成功時間との間隔となり、受信機器から車をどの程度追跡できるかを示す。どのケースでもロングテールは存在せず、ミューティング機構を搭載するとIPGの性能は向上する。C-V2Xでは柔軟な帯域幅を利用できるため、中国や米国のように、20MHzが利用可能な地域では性能がさらに向上する。

図1 車両間隔200mの場合
図1 車両間隔200mの場合
出所:Qualcomm
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 図2はC-V2XにSAE J3161/1ミューティング機構を搭載した場合と搭載しない場合の帯域幅10MHzと20MHz、装置間隔300mでの性能を示している。距離が長いほど性能は低下するが、20MHzの場合には、300m離れた装置から送信されるメッセージは、99%の確率で3.5秒以内に受信され、10MHzの場合にも95%の確率で受信される。ここでも、ロングテールは存在せず、ミューティング機構や帯域幅の増加により、IPGの性能は向上する。

図2 車両間隔200mの場合
図2 車両間隔200mの場合
出所:Qualcomm
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 現実的なシナリオでは、C-V2X搭載機器は100msの倍数にほぼ等しい周期性を持って動作しないため、リソースが重複することはなく、IPGは減少する。前述の2つの例では、SAE J 2945/1輻輳制御アルゴリズムに従って計算されたITT(Inter-Transmit Time)は、300ms付近で30msの範囲で変化する。そこで、BSMの周期性が300msに固定されていて、2000台の車両にV2X装置が搭載されている場合を考えてみた。 図3は3GPP高速道路経路損失モデルを使用して、この固定ITTを使ってシミュレーションした結果を示している。ロングテールは、ミューティング機構が実装されていない場合にだけ発生する。つまり、この人工的なITTシナリオでも、SAE J 3161/1ミューティング機構を使うことで、ロングテールは消失する。

図3 固定ITTの場合
図3 固定ITTの場合
出所:Qualcomm
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 上記以外にも、SAE J 3161で規定された各シナリオにて、ミューティング機構を搭載した場合に加え、搭載しない場合にも、IPGの累積分布は、良好なデータを示した。以上によりIPGロングテールは、作為的に設定した車両位置やITT値、適切なミューティング機構の未使用、不適切な経路損失モデルでの実験によって発生することから、C-V2Xは混雑した高速道路でも良好に動作すると言ってよいだろう。