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 米Qualcomm(クアルコム)は2021年2月17日、より高性能の5Gネットワークに向けたvRAN(仮想無線アクセスネットワーク)およびO-RAN(オープン仕様に基づくRAN)の動向についての解説を自身のブログに掲載した。以下はその概要となる。

 世界人口の3分の2以上がMNO(mobile network operators、移動通信事業者)の提供するRANサービスに加入するようになり、移動通信での5Gサービス普及に向けた取り組みも加速している。

 これまで、RANソリューションは、2Gから5Gまで世代を超えて、基幹ネットワークやネットワーク管理システムに向けた相互接続機能を提供してきた。しかし、その間に多くのRAN開発ベンダーの統廃合が行われ、MNOはRANベンダーを選択する際にその技術よりビジネス補償面を優先するようになった。こうしてMNOが利用可能な装置や機能の制約が、サービス提供時期の遅れ、競合との差別化困難にもつながっている。

 こうした中、新機能を搭載する大容量のモバイルネットワークを迅速に提供したいMNOからのCOTS(commercial off-the-shelf、棚からすぐに出して使える市販品の採用)、つまり汎用プロセッサーやハードウエアを活用した開発への要求が高まり、ハードウエアとソフトウエアの分離、そしてNFV(network function virtualization、ネットワーク仮想化)の取り組みが始まった。このNFVを補完し、迅速な運用を支援するものが、ネットワーク機能間オープンインターフェースだ。仮想化の取り組みは、まず、基幹ネットワークインフラから始まり、COTSを使った仮想基幹ネットワークが、移動通信向け基幹ネットワークのデファクトモデルになった。

 拡張性の高い環境を迅速に構築するための5G仮想RAN構成
拡張性の高い環境を迅速に構築するための5G仮想RAN構成
出所:Qualcomm
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リアルタイム動作に向けたハードウエア対応と性能改善

  基幹ネットワークに続いては、RANの仮想化に向けた取り組みが始まった。RANは、通常BBU(baseband unit、ベースバンド装置)でのデジタル処理と無線処理部でのアナログ処理から成る。まず、RAN BBUの仮想化に向けては、ハードウエアとソフトウエアの分離が必要となる。

迅速なネットワークサービス提供に向けた仮想化、分離とオープンインターフェース
迅速なネットワークサービス提供に向けた仮想化、分離とオープンインターフェース
出所:Qualcomm
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 RANプロトコル下位層の特徴としては、汎用プロセッサーでの効率的な処理が難しいリアルタイム機能と複雑な信号処理アルゴリズムが挙げられる。BBUのRANプロトコルのレイヤーでは、まずセントラルユニット(CU)と分散ユニット(DU)に分離し、その上で、コントロールプレーン(制御処理)とユーザープレーン(ユーザーデータ処理)を分離する。COTSハードウエアプラットフォームとNFVを使って、制御処理とユーザーデータ処理用ソフトウエアを分離することで、ネットワーク負荷やユーザーアプリケーションに柔軟に対応するネットワークインフラを簡単に実現できるようになる。例えば5Gで無制限のデータ通信や固定無線サービスを提供する場合には、高い負荷に耐えられるユーザープレーンが必要となるが、こうした場合にも、ソフトウエアで容易に対応できる。

 リアルタイム機能や複雑なアルゴリズムは、DUのCOTSハードウエアを専用のハードウエアアクセラレーターで強化して対応する。COTS のCPUとハードウエアアクセラレーター間にAAL(acceleration abstraction layer)を置くことで、標準仕様を用いた相互運用が可能になる。リアルタイム性のそれほど高くないCU、DU機能については、分離されたCOTSハードウエアと汎用プロセッサーを使って仮想化する。

 物理層のデジタル処理部内にある直列型ハードウエアアクセラレーション
物理層のデジタル処理部内にある直列型ハードウエアアクセラレーション
出所:Qualcomm
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相互運用の拡張に向けたオープンインターフェースの標準化

 3G、4Gおよび5G移動通信ネットワークの標準化を進める3GPPでは、端末からRAN、基幹ネットワークまで、相互運用可能なインターフェースの世界規模の標準化を進めている。O-RAN(O-RAN Alliance)やSCF(Small Cell Forum)といった団体では、世界的なネットワーク事業者、技術プロバイダー、調査機関と共に、オープンインターフェースの標準化と機能性能強化を行い、3GPPの5G仕様を補完する。

O-RANやSCFでは3GPPの5G標準化仕様を補完する柔軟なオープンインターフェースの標準化に取り組んでいる
O-RANやSCFでは3GPPの5G標準化仕様を補完する柔軟なオープンインターフェースの標準化に取り組んでいる
出所:Qualcomm
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 SCFやO-RANが提供するnFAPI(network functional application platform interface、ネットワーク用アプリケーションプラットフォームインターフェース)やCUS(user and synchronization plane)インターフェースは、さらなる高い拡張性と分散化を実現し、URLLC (ultra-reliable low latency communications、超高信頼低遅延通信)など、最も要求の厳しいアプリケーションを可能にする。CoMP(coordinated multi-point、多地点協調)などの通信性能強化機能は、このnFAPI やCUSインターフェースを活用してデジタル処理部と複数のRU(radio units)間の処理性能を改善する。O-RANでは、リアルタイムに近いRIC(RAN Intelligent Controller)も導入し、標準化されたオープンインターフェースを使って、複数のRANネットワーク機能を横断したエッジクラウドによる、セキュアで拡張性の高い5Gネットワーク制御も実現する。

 こうした3GPPやO-RAN Alliance、SCFの標準化活動により、相互運用性の高いエコシステム開発と、共通化された5Gプラットフォーム構築が可能となる。こうした技術は、公共ネットワークはもちろん、成長著しいプライベートネットワークの市場をも支えている。