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 理化学研究所は2021年3月4日、スーパーコンピューター「富岳」上で実施したウイルス飛沫のシミュレーション結果を報告した。それによると、一般にウイルスの捕捉率が高いとされる不織布マスクも着用方法によって捕捉率が10ポイント以上低下するほか、いわゆる二重マスクによる捕捉率の向上効果は限定的としている。新型コロナウイルスの感染拡大防止に向け、マスクの正しい着用の重要性を改めて示した。

 研究を手掛けた理化学研究所・神戸大学の坪倉誠教授は2020年11月にも研究の成果を発表しており、今回が5回目の報告。今回は、鼻にフィットさせるための金具が付いた一般的な不織布マスクについて、装着方法による飛沫の飛散防止能力を比較した。

 シミュレーションでは、金具を調整して鼻の形に完全にフィットさせた不織布マスクの場合、放出される飛沫の85%をマスクが捕捉するとの結果が出た。これに対して、金具を調整せずに不織布マスクを装着した場合は、捕捉率が69%に低下するとのシミュレーション結果が出たという。

 今回のシミュレーションでは併せて、金具を調整して装着した不織布マスクの上からウレタンマスクを重ねて装着する、二重マスクによる捕捉率も測定。これによる飛沫の捕捉率は89%で、金具を調整した不織布マスクに対し4ポイントの上昇にとどまった。「二重マスクは不織布マスク1枚をきちんと着けた状態とあまり性能は変わらない。むしろ、隙間をつくらないように不織布マスクを正しく装着することの方が重要だ」(坪倉教授)と指摘した。

 報告ではさらに、立ち止まって会話する場合と歩きながら会話する場合で飛沫の飛散を比較した結果を示した。それによると、歩行時は歩いている人の後方に飛沫が多く漂うことが明らかになった。坪倉教授は「歩行している場合は歩行者の前方より後方のほうが感染リスクが高まることが明らかになった。立ち止まっているときはソーシャルディスタンスを1~2メートルほど取るべきとされているが、歩行時はそれよりも長い距離に飛沫が飛散する」と注意を呼び掛けた。

静止時と歩行時の飛沫の飛散シミュレーションの結果(上:静止時、下:歩行時)
静止時と歩行時の飛沫の飛散シミュレーションの結果(上:静止時、下:歩行時)
(出所:理化学研究所)
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