アドバンスコンポジット(静岡県富士市)は、アルミニウム(Al)合金とセラミックスの複合材「AC-Albolon(アルボロン)」の新しい成形技術について国内特許を取得した。「沈降法」と「プレス法」の2種類。既存の「粒子充填(じゅうてん)法」の課題であるメタルフローの発生を抑えたのが特徴。3つの成形技術の使い分けにより、さまざまな用途に対応できるという。

 AC-Albolonは、引っ張り強さが290MPaで曲げ強さが370MPa、ヤング率が115GPaと、鋳鉄並みの高い機械的特性を備える。一方で密度は鋳鉄の約1/3と軽いため、電気自動車や半導体製造装置、産業用ロボット、家電・重電などの部材に適用して軽量化を図れる(図1)。

図1 「AC-Albolon」の適用例
図1 「AC-Albolon」の適用例
半導体製造装置の治具(左)と、空気圧縮機用スクロール(右)。(出所:アドバンスコンポジット)
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 AC-Albolonを製造する3つの方法はいずれも、金型にセラミックスのプリフォームとAl合金の溶湯を入れ、圧力をかけて凝固させる「溶湯鍛造法」のバリエーション。異なるのは、プリフォーム(強化材)の造り方だ(図2)。

図2 AC-Albolonの成形法
図2 AC-Albolonの成形法
3つの成形方法は、プリフォームの造り方に違いがある。(出所:アドバンスコンポジット)
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 新たな方法のうち、沈降法の工程は以下の通り(図3)。まず、セラミックスの粉末粒子とバインダーを混合し、振動を加えながら液体の中で沈ませて固める。この作業によって板状の固形物を造り、それを焼き固めてプリフォームとする。プリフォームを高圧プレス機の金型の中に設置し、上から溶湯にしたAl材料を注ぎ込んで圧力をかけると、Alがセラミックス内に浸透し、AC-Albolonが出来上がる。

図3 沈降法のプリフォーム成形技術
図3 沈降法のプリフォーム成形技術
セラミックス粒子とバインダーを液体に沈ませて固め、その後に焼成する。(出所:アドバンスコンポジット)
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 液体にセラミックス素材を沈めて定着させた後、焼成する時間が必要なため、粒子充填法に比べて手間と時間がかかる。一方で、より強固なセラミックス素材のプリフォームにAlを含浸させるので、メタルフローは発生せず、外観上の品質要求に応えやすい。

 もう1つの新技術であるプレス法では、プレス成形機の金型にセラミックス粉末やバインダーを充填し、プレスして凝固させた上で焼き固めて板状のプリフォームを造る(図4)。沈降法とは異なり、振動を加えたり沈降させたりする工程が要らず、メタルフローも抑えられる。

図4 プレス法のプリフォーム成形技術
図4 プレス法のプリフォーム成形技術
セラミックス粉末とバインダーをプレス成形によって固め、焼成する。(出所:アドバンスコンポジット)
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 ただし、セラミックス粉末を圧力のみで固めるため、プレス成形機の仕様によっては対応できない。現状はプリフォームを大きく成形できず、大型の部品には向かない。

 既存の粒子充填法は、鉄でできた升(ます)状の型枠にセラミックス粉末を充填し、振動をかけて締め固める(図5)。その状態で型枠ごと高圧プレス機の金型の中に置き、Al材料の溶湯を注ぎ込む。その上から圧力をかけてAlをセラミックス素材の中に含浸させ、複合化する。

図5 粒子充填法のプリフォーム成形技術
図5 粒子充填法のプリフォーム成形技術
充填したセラミックス粉末に振動を加えて締め固める。(出所:アドバンスコンポジット)
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 この方法は「最も簡便で工程が少なく、成形しやすい技術」(同社)。半面、セラミックス粉末に溶湯のAlを流し込んで加圧・成形すると粒子が流動し、成形後の製品にメタルフローと呼ばれる筋やマーブル(大理石)状の模様が浮き出るケースがあったという。