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 「2050年のカーボンニュートラル(炭素中立)に対応しないと、日本ではクルマが造れなくなる。その結果、自動車関連産業に従事する約550万人のうち70万~100万人の雇用が失われる可能性がある」──。

 日本自動車工業会(JAMA)会長の豊田章男氏(トヨタ自動車社長)は2021年3月11日にオンラインで開催した定例会見でこのように述べ、炭素中立が日本の自動車産業に突き付けている課題に対する危機感を示した()。

豊田章男氏
図 JAMA会長の豊田章男氏
(オンライン会見の画面をキャプチャー)
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 豊田氏によると、「LCA(ライフ・サイクル・アセスメント)」ベースで自動車産業が炭素中立を実現するには、エネルギーのグリーン化が大前提になるという。エネルギーのグリーン化とは太陽光や風力、バイオマス(生物資源)などの自然エネルギー(再生可能エネルギー)で、クルマの生産に必要な電力などのエネルギーを作ることである。

 現在の日本の電力事情を見ると、総発電量の約75%を火力発電が占める。さらに、再生可能エネルギーのコストは、火力発電よりも高い。このままでは日本でクルマが造れなくなり、「エネルギーのグリーン化が進む地域に生産をシフトしていくことが予想される」(豊田氏)とした。

 日本メーカーの海外への完成車の輸出台数は2019年で約482万台。豊田氏は、「日本で生産するこの輸出分が、エネルギーのグリーン化が進む地域に移管される可能性がある」と指摘する。その結果、約550万人のうち70万~100万人の雇用が失われるという。

 こうした最悪の事態を招かないために、「クルマを中心に据え、エネルギー政策や産業政策とセットで炭素中立を考える必要がある」と豊田氏は強調する。日本の自動車メーカーにとって50年までの約30年間は、日本における「ものづくり」を守れるかどうかの新たな挑戦になる。