ソフトバンクは2021年3月15日、放電容量は約3Ahの次世代リチウム(Li)イオン2次電池(LIB)のラミネートセルを開発したと発表した。

 この電池は、LIBの負極を従来の炭素(C)材料から金属Liに置き換えた「金属Li負極電池」にあたる。負極材料としてのLiはCと比較して理論容量が高くイオン化時の電位が低いことから、電池のエネルギー密度を大幅に高められるポテンシャルがある。実際、試作したセルの重量エネルギー密度は451Wh/kgで、現行LIB(高くても約270Wh/kg)の1.7倍になる。体積エネルギー密度も880Wh/Lと高い。

 ただし、充放電サイクル寿命は「100~200回」(先端技術開発本部 先端技術研究室 担当部長の齊藤貴也氏)だとする。今後、サイクル寿命を改善できた場合、次世代通信プラットフォームの1つである空飛ぶ基地局「HAPS(High Altitude Platform Station)」に搭載する可能性があるという。HAPS用の軽量電池が悲願の同社は、次世代電池ベンチャーの米Enpower Greentechと共同で金属Li負極電池の開発を進めていた。

開発したラミネートセル
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開発したラミネートセル
(出所:ソフトバンク)
放電レート特性
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放電レート特性
(出所:ソフトバンク)

デンドライト抑制と長寿命化に光明

 このラミネートセルには応用していないが、金属Li負極電池の課題であるデンドライト(樹状突起)形成を抑制する基礎技術も同時に発表した。負極と液体電解質の界面に10nm厚以下の無機物材料をコーティングするというものだ。ソフトバンクによれば、金属Li負極は電解質との界面に不均一な不動態被膜が形成されやすく、これがLiイオンの不均一な拡散を招いてデンドライトの成長につながっていたという。一方、コーティングを施すことで、Liイオンの拡散が均一になり、平らな界面を保てるようになったという。

 ソフトバンクとEnpower Greentechは、このコーティング技術を採用したコイン型Li対称セルを試作。500時間(300サイクル相当)の充放電テストを実施した。その結果、短絡は起こらず、「非常に低い過電圧を維持し続けた」(ソフトバンク)とする。451Wh/kgのラミネートセルにこの技術を適用すれば長寿命化が望めるとする。

コイン型Li対称セルの充放電試験結果
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コイン型Li対称セルの充放電試験結果
(出所:ソフトバンク)

 ソフトバンクは21年6月に次世代電池の性能を検証する「ソフトバンク次世代電池Lab.」を設立し、電池開発を加速させる見通し。同社によれば、金属Li負極の採用によって重量エネルギー密度は500Wh/kg程度までの向上が見込めるという。