全日本空輸(ANA)は2021年3月30日、羽田空港の制限エリア内で3月29日から実施しているレベル3相当の自動運転トーイングトラクター(けん引車)の実証実験を報道陣に公開した。制限エリア内の他車両と混在した環境での運行に支障がないかなどを検証のうえ、同年10月にも乗客の手荷物などの運搬に自動運転けん引車を使用する試験運用に移行する。さらに2025年をめどに、制限エリア内での無人運転実現を目指す。

羽田空港の制限エリア内をレベル3相当の自動運転で走行するトーイングトラクター(けん引車)
羽田空港の制限エリア内をレベル3相当の自動運転で走行するトーイングトラクター(けん引車)
(撮影:日経クロステック)
[画像のクリックで拡大表示]

 実証実験に使用したけん引車は、豊田自動織機製の市販の電動けん引車「3TE25」をベース車両として自動運転機能を追加している。乗客からの預け入れ手荷物や貨物が多い羽田空港での本格運用を想定し、コンテナ6個を搭載したドーリー(台車)をけん引でき、かつ坂道の上り下りができるベース車両を選定した。実証実験では手荷物の代わりに200キログラムの重りを各コンテナに格納し、制限エリア内に設定した約3キロメートルのコースを、けん引車の制限速度である時速15キロメートルで15分ほどかけて走行する。

 現在地の測位や障害物の検知用として複数のセンサーを搭載している。具体的には、測位用としてRTK-GNSS(リアルタイム・キネマティック測位衛星システム)と3次元レーザーレーダー(LiDAR)、アスファルトなど路面模様のパターンマッチングに使用するカメラを底部にそれぞれ搭載。これにジャイロ(角速度)センサーを合わせ、複数のセンサーデータを組み合わせることで上空の見通しの有無などに関わらず空港内をスムーズに走行できるようにしている。測位誤差は約2センチメートル。自動運転は雨天時も可能だが、積雪時の運行は未検証という。障害物の検知用にはLiDARと2次元レーザーレーダーを組み合わせ、車両近傍から数十メートル前方までを監視。障害物検知時の減速・停止、障害物が取り除かれた時の運転再開のいずれも自動対応できる。

自動運転けん引車に搭載した測位用のセンサー類
自動運転けん引車に搭載した測位用のセンサー類
(出所:豊田自動織機)
[画像のクリックで拡大表示]
自動運転けん引車に搭載した障害物検知用のセンサー類
自動運転けん引車に搭載した障害物検知用のセンサー類
(出所:豊田自動織機)
[画像のクリックで拡大表示]

 羽田空港で自動運転けん引車を導入する意義についてANAの要海昌樹執行役員は「航空便の出発・到着時は地上支援(グランドハンドリング)のスタッフが10人前後で対応しているが、うち3~4人はけん引車による搬送業務に当たっている。無人運転が実現すれば搬送業務を効率化でき、今後労働人口が減少しても地上支援業務を維持できる」とする。

 自動運転けん引車を開発した豊田自動織機の一条恒執行職トヨタL&FカンパニーR&Dセンター長は、2025年を目標とする無人運転けん引車の実現に向けて「個々の車両の制御だけでなく複数車両を群制御するための人工知能(AI)が今からの一番の課題だと思っている。そのほか、信頼性や耐久性、雪などの悪天候でも自動運転できるロバスト性の向上、より多く使っていただくための単価低減にも取り組んでいきたい」と語った。

ANAの自動運転けん引車のロードマップ。2025年をめどに無人運転の実現を目指す
ANAの自動運転けん引車のロードマップ。2025年をめどに無人運転の実現を目指す
(出所:ANA)
[画像のクリックで拡大表示]