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 富士通研究所(川崎市)は、工場全体から取得した大量の映像を高速に解析するシステムの自動設計技術を開発した。手作業の組立工程などでは、カメラと人工知能(AI)による映像解析を活用して作業品質と効率を向上させる取り組みが進んでいる。新技術は、こうした映像解析システムの設計に適用できる。

* 富士通研究所のニュースリリース

 新技術で設計したシステムは、データセンターに集約したGPUサーバーとエッジサーバーを連携させて映像を分割処理することで、各エッジでの映像処理の負荷変動をデータセンター側で吸収する(図1)。これにより、エッジに設置するサーバーの台数を最小限に留めながら、ピーク時を想定した処理性能を実現できる。システム全体のコストを1/3まで抑えられるとする。

図1:エッジとデータセンターの連携によるシステムコストの削減効果(出所:富士通研究所)
図1:エッジとデータセンターの連携によるシステムコストの削減効果(出所:富士通研究所)
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 さらに、一連の映像解析処理を、入力処理や色調整といった「前処理」とAIによる「解析処理」、表示などの「後処理」に分割してコンテナ化。処理ごとに分散させて、リソース要件を満たすサーバーに自動で配備する。このとき、必要なCPUのコア数やメモリー量に加えて、CPUのクロック周波数やGPUの性能などの映像処理特有の要件もパラメーターとして扱えるようにした。

 その上で、各処理のリソース要件を満たしつつ、エッジとデータセンターの間の通信量が最も少なくなるように、各コンテナの配備先を自動で判断する(図2)。これにより、解析性能を保証しながら、エッジに設置するサーバーの台数と処理性能を必要最小限に抑えられる。

図2:エッジとデータセンターを連携させたシステムの性能を最適化する設計技術(出所:富士通研究所)
図2:エッジとデータセンターを連携させたシステムの性能を最適化する設計技術(出所:富士通研究所)
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 1つのGPUで、複数コンテナの同時処理が可能。各コンテナでの処理におけるリアルタイム性の要求度合いに応じてスケジューリングすることで、データセンターのGPUの利用を効率化できるとしている。

 同社によると、データ収集が難しい手作業の組立工程などで作業品質・効率を高めるため、映像から作業手順のミスや危険な動作などをリアルタイムに検出し、作業員にすぐ知らせるといった取り組みが進んでいる。ローカル5Gを導入すれば工場全体で映像を収集しやすくなるため、さらに映像解析の活用は広がる、と同社はみている。

 しかし、映像解析のためのシステムを構築するには、映像処理や深層学習の演算を得意とする高価なGPUサーバーを用意し、ピーク時の処理負荷に対応可能な規模で現場に設置しなければならない。そのため、工場全体に設置した多数のカメラで取得した映像を解析しようとすると、機器のコストがかさむという課題があった。加えて、いったん構築したシステムの構成は変更しづらく、運用開始後に映像内の解析対象が増減したり現場業務の作業が変更されたりして映像解析の処理負荷が変動するのに対応できない。こうした理由から、従来は大規模な映像解析を実施するのが難しかったという。

 同社は、組立工場を想定した実験環境で新技術の効果を検証した。具体的には、16台分のFull-HDカメラで撮影した作業員の行動の映像から組み付け作業のミスと運搬物の滞留をAIで検出する映像解析システムを構築。16台のエッジサーバーとデータセンターを連携させたシステムを新技術で設計した。検証の結果、作業ミスなどを数秒でフィードバックできること、サーバーを含むシステム全体のコストを1/3まで抑えられることを確認できた。今後は、ローカル5Gを導入した工場などのさまざまな現場で実証を進め、2022年度内の実用化を目指す。