ユーグレナとセイコーエプソン、NECの3社は東京大学大学院農学生命科学研究科教授の岩田忠久氏と共同で、バイオマスプラスチック「パラレジン」の技術開発・普及推進を目的とする共同事業体「パラレジンジャパンコンソーシアム」を設立した(図1)。パラレジンの安定供給に向けて、生産・利活用における課題の解決を目指す。
パラレジン(pararesin)は、微細藻類のユーグレナ(和名:ミドリムシ)が細胞内に蓄積する多糖類のパラミロンを使ったバイオプラ(図2~5)。名称はパラミロン(paramylon)と樹脂(resin)の組み合わせだ。パラミロンはβ-1,3グルカンから成り、β-1,4結合のセルロースに比べて、樹脂として成形したときに流動性に優れるなどの特徴を持つ。ユーグレナの培養方法を調整すると、高密度に生成できるという。
今回、パラレジンの製品化までの各段階での技術を持つ3社が幹事企業としてコンソーシアムを組み、各社のノウハウを生かして実用化を加速させる。ユーグレナの培養に当たっては、酵素糖化技術によって古紙や食物残さなどのセルロースから糖化物を得て、これをユーグレナに与える。廃棄物を活用した非可食バイオプラによる資源循環システムを構築できる。
コンソーシアムでは、パラレジンの生産における課題を[1]古紙などの廃棄物由来糖源の規格化、[2]誘導体化原料となるパラミロンの規格化、[3]パラレジンの規格化・製品化の3つに分け、ワーキンググループ(WG)を設置(図6)。それぞれセイコーエプソン、ユーグレナ、NECが推進を担う。3社に加えて、縁舞(埼玉県志木市)やKISCO(大阪市)、KOBASHI HOLDINGS(岡山市)、佐賀市、新菱冷熱工業(東京・新宿)、日東電工、日本紙パルプ商事、バイオポリ上越(新潟県上越市)、LIXIL、リコーテクノロジーズ(神奈川県海老名市)が参画する。
WGのうち[1]では、古紙などの未利用資源の糖化プロセスの確立を目指す。セイコーエプソンが持つ、紙などの繊維材料から新たな素材を造り出す技術「ドライファイバーテクノロジー」を応用する。[2]では、ユーグレナの培養からパラミロンの抽出・精製までの段階における規格化を推進する。[3]は、パラミロンの誘導体化からコンパウンド、パラレジン製品の生産、リサイクルまでが対象。パラレジンの規格化に加えて利活用についても検討し、「多糖系バイオプラの社会実装の潮流を作る」(NEC)としている。
さらにコンソーシアムは、パラレジンの普及推進に関するロビー活動も展開。パラレジン市場の早期創出とシェア獲得に向けても連携する。2030年には、年間20万t規模でパラレジンを供給できるようにする目標だ。