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 米Microsoft(マイクロソフト)は現地時間2021年4月12日、米AI(人工知能)企業Nuance Communications(ニュアンス・コミュニケーションズ)の買収で両社が合意したと発表した。保有負債も含め197億ドル(約2兆1500億円)の価値を見積もっており、実現すればマイクロソフトが262億ドル(約2兆8600億円)を投じた人材SNSの米LinkedIn(リンクトイン)に次ぐ規模となる。買収によりマイクロソフトは、学習済みの音声認識アルゴリズムの価値を広げる試みに乗り出す。

 ニュアンスは会話型の音声認識AIに強みを持つ老舗大手で、現在ヘルスケア分野に注力しており、診察時の医師と患者とのやり取り音声をデータ化するサービスなどを提供する。過去には米Apple(アップル)の音声アシスタント機能「Siri(シリ)」の開発に技術を提供したとされる。

 ニュアンスの「臨床音声認識SaaS製品」は米国の医師の55%以上、放射線技師の75%以上、米国の病院の77%で利用されているという。両社は2019年から提携関係にあり、ニュアンスの同製品はマイクロソフトのクラウドプラットフォームのAzure上で構築している。このためAzureなどを利用するマイクロソフトの顧客にニュアンスの製品を売り込むだけでなく、ニュアンスの顧客にAzureを提案しやすい。

 ニュアンスは車載向けの音声認識も得意としており、ノイズ環境下での認識にも強みを持っている。このため医療や自動車の分野だけでなく、雑音の多い工場、複数人がいるリビングルームなど適用分野は幅広い。コロナ禍で需要が見込まれる声という「非接触」での操作で、各産業を攻め込める。

 マイクロソフトは産業ごとのクラウドプラットフォームやアプリケーションを強化しており、ニュアンスの巨額買収はヘルスケア分野の柱となる。マイクロソフトのクラウド&AI担当のエグゼクティブ・バイス・プレジデントであるスコット・ガスリー氏がニュアンス事業を担当し、ニュアンスのマーク・ベンジャミンCEO(最高経営責任者)は現在のポジションに留まる。

 なお、マイクロソフトはニュアンスの株式を、21年4月9日の終値に23%のプレミアムを加えた1株56ドルで買収する。ニュアンスの負債も含めると197億ドルとなり、2兆円規模となる見通しだ。買収計画は両社の取締役会で合意を得ており、株主や規制当局の承認などを得た上で2021年末までに完了する予定だ。