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 NECと三菱重工工作機械(滋賀県栗東市)、NTTドコモ、サンリツオートメイション(東京都町田市)、構造計画研究所(東京・中野)の5社は、工場内の無線化に向けて5Gを用いた実証実験を実施した。21年1~2月に三菱重工工作機械の栗東工場(滋賀県栗東市)において、制御や映像伝送などのアプリケーションを想定し、5Gによる無線通信を評価した。その結果、5Gの有効性を確認するとともに、工場の無線化に必要な知見を得た。

* NECのニュースリリース:https://jpn.nec.com/press/202104/20210422_02.html

 実験では、5Gの適用場面として[1]制御系ネットワークの無線化、[2]無軌道型AGV(自動搬送車)の遠隔制御、[3]生産設備の保守作業員向け遠隔支援の3つを想定。それぞれシステムを構築して5Gによる無線通信を評価・分析し、5Gの導入効果と実証に向けた機能・運用面の課題を抽出した。

 省力化や無人化、現場作業員の作業効率の向上、多能工化を実現し、生産設備やAGVシステムの制御、高精細画像による作業支援を実現するには、高速かつ大容量で安定した無線通信が不可欠とされる。だが、工場には、金属製の生産設備だけでなく大型クレーンやフォークリフトなどの可動設備もあり、電波が遮蔽されたり受信強度が変化したりする恐れがある。そこで今回、[1]~[3]の具体的なアプリケーションを設定し、実験した。

 [1]では、工場の制御系ネットワークで使われるEthernet/IPとCC-Link IEを対象に、5Gの無線ネットワークによる通信を評価した(図1)。5G基地局の設定を最適化して産業用Ethernet特有のサイクリック通信を計測(図2)。遅延や停止を0.1秒未満に抑え、長時間にわたって安定した通信が可能であると確かめた。

図1:制御系ネットワークの5G無線評価機器(出所:NEC)
図1:制御系ネットワークの5G無線評価機器(出所:NEC)
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図2:サイクリック通信時の上り方向の通信状況(出所:NEC)
図2:サイクリック通信時の上り方向の通信状況(出所:NEC)
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 [2]では、電波を遮蔽する金属物の多い工場内で、監視カメラを搭載した無軌道型AGVを稼働させた(図3-13-2)。高精細画像を想定した常時10Mbps以上の伝送とAGVの制御信号の送受信を実施。それらが途絶えることなく同時に実行できることを確認した。併せて、監視カメラを利用して遠隔監視しつつ自律移動ロボットの管制ソフト「NECマルチロボットコントローラ」で制御し、周囲の環境を把握しながらリモートで作業できることを検証した。

図3-1:無軌道型AGVのシステム構成
図3-1:無軌道型AGVのシステム構成
(出所:NEC)
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図3-2:無軌道型AGV
図3-2:無軌道型AGV
(出所:NEC)
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 5Gの通信エリアは無線LANに比べて広いものの、遮蔽物の多い工場ではエリアの端に電波が届きにくいケースがある。そこで実験では、無線LAN装置を追加で設置して通信エリアを拡張(図4)。NECのネットワーク仮想化技術を利用して、通信状況に応じて5Gから無線LANへ切り替えられるようにした。切り替え時に瞬断が発生せず、制御を止めずに運用できると確認した。

図4:工場内に設置した基地局用無線ユニット
図4:工場内に設置した基地局用無線ユニット
(出所:NEC)
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 [3]については、5Gによる映像伝送を利用し、生産設備の保守作業を遠隔するシステムをクラウド基盤サービス「NEC Cloud IaaS」に構築(図5-15-2)。現地の映像を遠隔地で共有し、スマートグラスを装着した現場作業員に情報を提供したり、Webアプリケーションを通じて遠隔保守員に設備状態に関する情報を提供したりした。同時に、5Gでの振動データの収集や人工知能(AI)によるデータ解析、現場へのフィードバックをリアルタイムに実行し、熟練工が現場にいなくても工具の摩耗状況などが分かる仕組みを整えた(図6)。

図5-1:遠隔保守作業支援のシステム構成
図5-1:遠隔保守作業支援のシステム構成
(出所:NEC)
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図5-2:遠隔保守作業支援の様子
図5-2:遠隔保守作業支援の様子
(出所:NEC)
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図6:稼働中の加工装置から振動データを収集する様子
図6:稼働中の加工装置から振動データを収集する様子
(出所:NEC)
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 その他、電波環境の情報をクラウドに収集し、工場内での動的な電波マップを作成(図7)。工場特有の要因が無線の状況に及ぼす影響を把握し、多くの知見を得られたという。

図7:クラウドを利用して可視化した動的な電波マップ
図7:クラウドを利用して可視化した動的な電波マップ
(出所:NEC)
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 NECは今後、実験結果をローカル5Gシステムの導入に生かす。アプリケーションを含めたシステムやサービスを提供し、工場内の無線化を推進する。

 今回の実験は、総務省事業である令和2年度「地域課題解決型ローカル5G等の実現に向けた開発実証」の委託を受けて実施した。