NECの森田隆之社長兼CEO(最高経営責任者)は2021年5月19日、報道陣のグループインタビューに応じた。2021年4月から同社を率いる森田社長は「グローバルに見て『普通の会社』に戻った」と同社を評価。「色々な大きな課題や問題点を解決して、先に向けた手を積極的に打てる状態になった。財務健全性は相当しっかりし、重点領域について、グローバルのトップ企業に照準を定められるようなフェーズに入ってきた」と語った。

森田隆之社長兼CEO(最高経営責任者)
森田隆之社長兼CEO(最高経営責任者)
1960年生まれ、大阪府出身。東京大学法学部卒業後、1983年NEC入社。2016年4月に執行役員常務兼CGO(チーフ・グローバル・オフィサー)に就任、2018年4月に副社長、2021年4月から現職。趣味は読書と将棋
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 行政のデジタル改革にNECが果たす役割について、森田社長は「デジタルガバメント先進国である英国やデンマークでその電子政府の一翼を担うIT企業を買収してきた。少し先の話にはなるだろうが、買収企業が培ってきたノウハウや経験が寄与できる」とした。NECが長く中央官庁や自治体向けにシステムを手掛けてきた経験も役立てる考えだ。

 他方、自治体向けシステムに関しては、「安定・安心なシステムや、既存システムからの新システムへの移行に関するケアなどは(NTTデータや富士通など競合)各社が力を入れている」との認識を示した。そのうえで、差異化できる製品として基盤ソフトの「FIWARE」を活用したサービスを挙げた。同ソフトは欧州連合(EU)の次世代インターネット官民連携プログラムで開発・実装した国際的にオープンな基盤であり、「FIWAREに準拠するほか、経済効果の高いシステムを提供して受注を増やしたい」と意気込みを語った。

 伝統的に強みを持つネットワーク分野では、基地局製品をマルチベンダー構成にできる「Open RAN」について、「パフォーマンスを心配する向きはあるが、通信事業者にとって有力な選択肢になると期待する声も非常に大きい。引き合いは強く頻繁で、商用化をにらんだ検討が進んでいる」とした。2021年度中には海外で商用案件が出てくるとの期待を述べた。

 NECと同じくNTTや楽天モバイルと提携した富士通については、「似たようなところもあるが、各社の特徴が出てきている。富士通はCPU、NECは通信系のアクセラレーターなどだ」と話した。NTTが打ち出す光電融合技術による次世代情報通信基盤の構想「IOWN(アイオン)」構想の開発フェーズにおいて「それぞれの特徴を出せる領域も出てくる。(IOWNにおける)舞台はグローバルだが、日本企業が中核を担っていけるとうれしい」とした。

 会社を支える技術と人材にも話が及んだ。技術面に関しては「事業開発の力を上げていくのは重要」としたうえで、R&D(研究開発)で開発した技術について「事業化スピードを上げていくことにかなり力を入れている」と述べた。米子会社のNEC Xは2021年5月18日にスタートアップの事業立ち上げを支援する米Alchemist Accelerator(アルケミストアクセラレーター)と提携し、「研究所の技術を基に事業化を進める仕組みを強化した」とした。

 人材育成や働き方改革については「社会的な価値を提供し続けるには、能力の高い人材がキーになる」との認識を示した。「才能ある人材が活躍するには重要な施策」として挙げたのが、オンラインで森田社長と社員が双方向に話せるタウンホールミーティングだ。「今後も継続的に実施する」と話す。役員を1年更新にして、コミットメントをベースに評価するなどの施策を徹底してきたことで、「3年間で社員のエンゲージメントを大きく改善してきた」とした。

 ジョブ型雇用についてはNECは海外では既に導入している。雇用は「社会の在り方や教育、採用の在り方など、さまざまなことを考慮しなければいけない」としたうえで「メンバーシップ型にも良い部分があると考えている。制度をジョブ型にしたからといってうまくいくものでもない」と話した。「ジョブ型的な組織になっていくのは必要だ。ジョブ型とメンバーシップ型の良いところを取り入れ、日本は日本、あるいはNECはNECなりの形をつくるべきだ」とした。