地上の設備と、高高度の無人飛行機(HAPS)、低軌道衛星、センシング衛星などを組み合わせた「宇宙統合コンピューティング・ネットワーク」を構築するーー。NTTとスカパーJSATホールディングスは2021年5月20日、宇宙事業創造を目指して提携すると発表した。
両社が構築を目指すのは、地上から、38万kmかなたの月に至る通信/コンピューティング資源を統合化したインフラである。「HAPSだけ、衛星だけというインフラ構想は各社が発表しているが、さまざまな資源を組み合わせて複合化/統合化した構想はこれまでにない」(NTT代表取締役社長の澤田純氏)。
この構想を実現するため、今後、両社で(1)宇宙センシング、(2)宇宙データセンター、(3)宇宙RAN(Radio Access Network)という3つの事業を展開する。
(1)の宇宙センシングは、既存の観測衛星、新規開発の観測衛星に加え、地上のIoT端末でセンシングするというもの。地上のIoT端末からのデータはNTTが開発した低軌道衛星MIMO(Multiple-Input Multiple-Output)技術によって低軌道衛星で収集するという。
(2)の宇宙データセンターは、コンピューティング処理基盤を持つ衛星を用意するというもの。(1)の宇宙センシングなどによって宇宙で収集したデータを、光通信などを使って宇宙データセンターに集め、宇宙空間で処理する。地上にデータを送る必要がなくなるため、リアルタイム性が向上するとともに、情報集約・分析処理済みのデータを地上に送るため、ユーザーの利便性が向上する。
宇宙データセンターには、NTTが2030年代をターゲットに実現を目指す次世代情報処理基盤「IOWN(Innovative Optical and Wireless Network、アイオン)」の中核技術である、光電融合技術†やディスアグリゲーテッドコンピューティング†を活用することで、超低消費電力性能や宇宙線耐性を持たせる。
(3)の宇宙RANは、低軌道や静止軌道にある衛星、HAPSを使った通信サービスを提供するもの。地上の基地局と連携し、災害に強い高信頼のメッセージングサービスや超広域カバレッジなどの利便性や付加価値を提供する。Beyond 5G/6G時代のコミュニケーション基盤と位置付ける。
宇宙センシング事業と、宇宙データセンター事業は2026年ごろに、宇宙RANは2028年ごろにサービス開始を目指すという。本事業における投資額は「今後、フィージビリティースタディーなどを行っていくので現時点では不明。ただ、何千台も何万台も衛星を打ち上げるという話ではないので、数百億円程度ではないか」(澤田氏)とする。