エネルギー密度がもう1桁高ければ……

 ただ、現状ではエネルギー密度などの性能はまだ発展途上だ。

 試作した9cm角(電極部分)、厚さ約9mmの電池の初期エネルギー容量は57.6mWh。体積エネルギー密度は0.8Wh/Lで、一般的なLIBの数百分の1と非常に小さい。また、エネルギー容量は充放電サイクル6回で初期容量の約86%に低下する。しかも4回めあたりから急速に容量が減少する。

 加えて、コンクリート2次電池といっても、利用できるのはコンクリートの表面から深さ方向で1cm弱の部分まで。つまり、ビルを電池にするといっても、利用できるのはコンクリートの表面部分だけである。

試作したコンクリート2次電池の電極
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試作したコンクリート2次電池の電極
手前がFeベースの負極、奥がNiベースの正極 (写真:Chalmers University of Technology)

 今回の電池のエネルギー密度を単位表面積当たりでみると、約7Wh/m2。仮に10階建てで床面積が30m角のビルで利用する場合、コンクリートが床全面に施工されている(外壁は全面窓とし、柱は除外)とするとその表面積は、30m×30m×11層×2面=1.98×104m2。これを全部電池にすると、最大で約139kWhのエネルギー容量となる。

 研究者はこの電池の用途として、「橋や高速道路自体を電池にして、そこに太陽光発電で電気をため、その電力で道路の状態をモニタリングする」といった使い方を挙げる。コンクリートの鉄筋の酸化防止のために、予防的に微弱電流を流す「電気防食」の電源として使うことも想定用途の1つだという。

 ただし、この技術の本当の狙い、目標は大容量蓄電システムとして非常用電源や再生可能エネルギーの発電量の季節間変動の平準化に使えるようにすることだろう。それであれば、充放電サイクルの長さはあまり重要ではなくなり、ビルの寿命とされる50年間、“電池の交換”は不要になる。ところが、その実現にはまだエネルギー密度が少なくとも1桁足りない。

 具体的には、139kWhは米Tesla(テスラ)のEV1台のLIBの100kWhよりやや多い程度。一方、利用するNiの量は1平米当たり約0.27kg/m2。上述の10階建てビル全体では約5.4トンにもなり、Niの調達費用だけで750万円を超えてしまう。ちなみにテスラを含む最近のEV向けLIBの価格は約1万5000円/kWh。139kWhなら200万円超で済む。今回のコンクリート2次電池でのNiの利用効率が著しく低いわけだ。このままではビル全体を電池にする大義名分は立たない。

 Niの利用効率を大幅に高めるか、あるいは正極活物質にNiではない安価な材料を利用しつつ、エネルギー密度の値を10倍に高めることができれば、10階のビル全体では1.39MWh。1フロアごとに139kWhの電力量を使えることになり、非常用電源などとして導入メリットを語れるようになる。