日本製鉄と日鉄ケミカル&マテリアル(東京・中央)、金属系材料研究開発センターの3者は、マリンバイオマス(海藻)を生産して製鉄プロセスの中で利用するサプライチェーンの構築に取り組む(図)。プロジェクト名は「マリンバイオマスの多角的製鉄利用に資する技術開発」。臨海製鉄所という地の利を生かした「バイオマスの地産地消」で、カーボンニュートラルの実現を目指す。

図:海藻の生産と製鉄プロセスでの利用による炭素循環システムの概要(出所:日本製鉄・日鉄ケミカル&マテリアル・金属系材料研究開発センター)
図:海藻の生産と製鉄プロセスでの利用による炭素循環システムの概要(出所:日本製鉄・日鉄ケミカル&マテリアル・金属系材料研究開発センター)
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* 日本製鉄のニュースリリース:https://www.nipponsteel.com/news/20210525_050.html

 同プロジェクトでは、[1]海藻の製鉄利用に向けた検討、[2]海藻の炭素材料としての利用に向けた検討、[3]海藻の大量・安定生産技術の3項目を要素技術の開発テーマに設定。日本製鉄が[1][3]を、日鉄ケミカル&マテリアルが[2]を、金属系材料研究開発センターが[1]を担当する。

 [1]では、海藻を炭材として高炉に装入することを想定し、炭材の製造に関わる技術や利用性を検討するとともに、製造システムの構築に向けた技術調査などを実施。[2]では、ピッチやタールなどの炭素材料として利用するために、海藻の水熱炭化実験や水熱炭化物の評価を実施する。[3]については、海藻のライフサイクル制御技術やゲノム編集技術を導入。鉄鋼スラグを利用した藻場の造成で培った日本製鉄の技術を生かし、海藻の育種に取り組む。

 3者によると、カーボンニュートラルを目的とした海藻の利用検討は「世界的に例がない研究」。同プロジェクトでは、上記3項目の開発と併せて、全体の経済性や二酸化炭素(CO2)削減効果を含めて事業性を検討し、実証段階への道筋をつける。長い海岸線を持ち、古くから海藻の養殖が盛んな日本には世界トップレベルの養殖技術・ノウハウがあるため、ブルーカーボンに関する技術開発は温暖化対策と産業育成の両面で有効だとみている。

 経済産業省革新的環境イノベーション戦略検討会が提示した「革新的環境イノベーション戦略」(2020年1月)に明記された「ブルーカーボン(海洋生態系による炭素貯留)の追求」に沿って、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が「先導研究プログラム/エネルギー・環境新技術先導研究プログラム/ブルーカーボン(海洋生態系による炭素貯留)追及を目指したサプライチェーン構築に係る技術開発」を開始。その委託先に3者が応募し、採択された。事業期間は21~22年度で、予算は1億4000万円。