ザインエレクトロニクスは、4K解像度の産業カメラを開発するためのキットを発売した ニュースリリース 。CMOSイメージセンサーなどを搭載したボードと、三脚への固定用ネジ穴を設けたアクリル製保護カバー、USBケーブルからなる。新製品は、USBインターフェースを介して映像信号や制御信号を伝送する規格「UVC(USB Video Class)」に準拠する。このため、専用のドライバーソフトウエアを用意しなくても、PCに直接つないで映像を表示できる。「購入して箱を開ければすぐに産業カメラを稼働させられ、PoC(Proof of Concept)に着手可能である」(同社)。
今回のキットに含まれるCMOSイメージセンサーは、ソニーセミコンダクタソリューションズの「IMX258」である。画素数は約1300万(4224画素×3192画素)で、最大フレーム速度は30フレーム/秒。「いわゆる4K解像度の映像を撮影できる」(ザインエレクトロニクス)。オートフォーカス機能は、一般的なコントラスト方式に加えて、位相差検出方式(PDAF:Phase Detection Auto Focus)にも対応する。「PDAFを使えば、コントラスト方式に比べて、短い時間でピントを合わせられる」(同社)という。同社によると、「4K解像度の映像を撮影でき、PDAFを搭載した産業カメラの開発キットは業界初」という。倉庫や工場、スーパーマーケットなどで使われる商品管理用定点カメラ、バーコードの読み取りに向けたハンディーターミナル、パスポートや運転免許証などのID認証用カメラ、人流や動線のモニタリング用カメラ、産業用AR(拡張現実)カメラ、教育用途に向けた書画カメラなどの開発を想定する。
新製品の型番は「THSCU101」である。ボードには、CMOSイメージセンサーやレンズなどを収めたカメラモジュールのほか、ザインエレクトロニクスの画像処理プロセッサー(ISP)「THP7312」、独Infineon Technologies(旧Cypress Semiconductor)のUSB3.0対応コントローラーIC「CX3」、フラッシュメモリーなどを搭載した。ボードの外形寸法は35mm×36mm×1.2mm。電源は、USBインターフェース経由で供給する。USBケーブルの長さは1m。コネクターの形状は、ボード側がmicro Bで、PC側がType-Aである。
撮影した映像/画像の明るさやコントラストなどは、PC上で動作するソフトウエアツールを使ってUSBインターフェース経由で調整できる。レンズのシェーディングやデモザイク、トーンマッピングなどのカスタマイズは、ザインエレクトロニクスが提供するISP用カメラ開発キット(CDK)を利用すれば実行できる。具体的には、CDKを使ってISPのファームウエアを書き換え、それをUSBインターフェース経由でフラッシュメモリーに書き込む。
新製品では、CMOSイメージセンサーを内蔵したカメラモジュールの個体差の調整が要らない。一般にカメラモジュールは、CMOSイメージセンサーやレンズの特性ばらつきによって、色味や明るさ、レンズのシェーディング特性などが個体ごとに異なる。新製品では、カメラモジュールの特性を測定し、この結果から求めた補正係数をカメラモジュールに収めたEEPROMに書き込んだ。システム起動時に、ISPがこのデータを読み込んで補正することで、カメラモジュールの個体差が発生しないように工夫した。「用途によっては撮影した映像の微妙な色の違いが許されないため、その調整に非常に多くの時間を費やしているのが実情だ。しかし、新製品を使えばそうした調整作業は不要だ」(同社)。
新製品は、インターネット通販サイトで販売中である。価格は約2万8000円(税込み)である。今後同社は、特性が異なるCMOSイメージセンサーを含むカメラ開発キットを製品化する考えだ。「今回の新製品では、画素ピッチが1.1μmと小さい携帯型電子機器向けCMOSイメージセンサーを採用した。このため、暗い場所でも撮影する監視カメラには向かない。次期製品では、画素ピッチが大きなCMOSイメージセンサーを採用する予定である」(同社)。