「シューズのパーツを、人工のクモの糸を使って作れそうなことが研究室(物性)レベルで見えてきた」。アシックスは2021年7月9日から9月8日までの約2カ月間、東京都渋谷区神宮前にオープンしている「ASICS EXPERIENCE TOKYO」で、未来のシューズの姿の1つとして人工クモ糸の活用を紹介している。冒頭のコメントの主は、研究開発を担当する同社執行役員スポーツ工学研究所長の原野健一氏である。

 アシックスは20年5月、投資子会社のアシックス・ベンチャーズを通じて、人工クモ糸繊維「SVX」の開発と生産を行うイスラエルのスタートアップSeevix Material Sciences(シービックス・マテリアル・サイエンス)に出資したと発表した。SVXは天然のクモ糸のように軽量ながら耐久性と弾性を併せ持つ極細のバイオプロテイン繊維である。高機能でありながら生分解性を持ち環境に優しいのが特徴だ。

人工クモ糸繊維を使ったシューズの説明。サステナブルな「Future Shoes」として紹介されている。
人工クモ糸繊維を使ったシューズの説明。サステナブルな「Future Shoes」として紹介されている。
(写真:日経クロステック)
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 Seevix Material Sciencesによると、SVXの引き糸は同じ直径の高張力鋼板よりも強度が高いうえに、重さは約5分の1と軽量。さらに温度耐性は-200~+230℃と広く、弾性も高張力鋼板の35倍と高い。ナイロンやケブラー(アラミド繊維)といった合成繊維と比較しても強度に優れるとしている。SVXは、クモのDNAからタンパク質の設計図を取って微生物に移植し、微生物がタンパク質を発酵させることによって生成されるという。

 原野氏によれば、アシックスではSVXを補強材としてくつ底に使えないか研究開発を進めているという。同社は18年6月に、次世代高機能素材として注目されているセルロースナノファイバー(CNF)を活用したシューズを世界で初めて商品化しているが、「SVXはその進化形という位置づけだ」(同氏)としている。

■変更履歴
記事掲載当初、「人工クモ糸繊維「SVX」を使ったシューズ」として展示会場で撮影した写真を掲載していましたが、そのシューズは既に販売中のものでしたので削除いたしました。おわびして訂正します。本文は修正済みです。[2021/7/14 18:00]