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 警察庁は2021年7月20日、2021年版「警察白書」を公表した。「サイバー空間の安全の確保」という特集を組み、サイバー犯罪やサイバー攻撃の情勢と、それらに対する警察の対処について述べている。

 警察によるサイバー犯罪の検挙件数は2020年には過去最多の9875件となった。インターネットバンキングに関する不正送金事犯の発生件数・被害額は1734件で、2019年の1872件と比べると7.3%減少したが「引き続き高水準で推移している」とする。特徴的な手口として金融機関や宅配事業者などを装ったフィッシング詐欺や、「Emotet」といったマルウエアの感染などを挙げている。

 重要インフラの基幹システムを機能不全に陥れるサイバーテロや、ICTを用いて政府機関や企業から機密情報を窃取するサイバーインテリジェンスといったサイバー攻撃が「世界的規模で発生している」ことにも同白書は警鐘を鳴らした。

 宇宙航空研究開発機構(JAXA)など国内約200の企業や研究機関が狙われたサイバー攻撃についても言及した。2021年4月に警視庁公安部は中国共産党員の男を書類送検した。2016年9月から2017年4月にかけて、JAXAなどへのサイバー攻撃に使われた日本国内のレンタルサーバーを5回にわたり、住所や氏名などを偽って会員登録した。「これらのサイバー攻撃がTickと呼ばれるサイバー攻撃集団によって実行されたものであり、このTickの背景組織として山東省青島市を拠点とする中国人民解放軍第61419部隊が関与している可能性が高いと結論付けるに至った」と同白書は記述する。

 警察庁はサイバー攻撃の予兆や実態などを把握する目的でインターネット上にセンサーを設置し、通信パケットを収集する「リアルタイム検知ネットワークシステム」を2002年から運用している。2020年には1つのセンサー当たり13.3秒に1回という高い頻度で世界中から不審なアクセスが行われたことを確認した。

 リアルタイム検知ネットワークシステムで検知した1つのセンサーに対する1日当たりの不審アクセスは2020年には6506.4件と、2016年の1692.0件と比べて約4倍に増加した。不審アクセスの多くはIoT(インターネット・オブ・シングズ)機器に対するサイバー攻撃や、ぜい弱なIoT機器の探索行為であるとみられるという。

 警察庁は2022年度中に「サイバー局」や、全国で発生した重大なサイバー犯罪の捜査を担う「直轄隊」を新たに設ける方針であると報じられている。同白書はサイバー犯罪やサイバー攻撃への対処能力を向上するため、警察の組織体制のあり方などについて必要な検討を行っていることも明記した。2022年度をめどとした警察組織の見直しも視野に入れた上で、2021年度末までに一定の方向性を示すとする。