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 豊田自動織機は、人工知能(AI)を活用した生産設備の自動補正システムを構築した。自動車のバンパーの製造に用いる射出成形機を対象に、実績データを分析して最適な設定値を予測し、射出成形機にフィードバックして生産品質を安定させる。同システムの構築に当たってAIインテグレーションサービスを提供した富士ソフトが発表した。

* 富士ソフトのニュースリリース

 当該製造ラインでは、射出成形機の情報を分析するシステム「情報分析基盤」が稼働しており、圧力や温度など数百のセンサーからのデータを波形として可視化している。自動補正システムでは、AIが射出成形機の最適な設定値を予測し、情報分析基盤の波形が理想状態に近づくように補正する()。これまでに、実測波形の理想波形からのかい離を検出し、適切な設定値を予測して波形を補正するといった一連の自動化が可能なことを確認。設定値を予測する推論モデルの機械学習による構築と自動更新に成功した。

図 バンパーの製造ラインで構築したAI自動補正システムの概要
図 バンパーの製造ラインで構築したAI自動補正システムの概要
(出所:富士ソフト)
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 従来は、環境の変化に合わせて人手で射出成形機の設定を調整していたが、この作業は長年の経験や勘に基づいており、ノウハウが属人化していた。加えて、設定を変える度に試し打ち(試験的な成形)が必要になり、成形品の品質が合格基準を満たすまで設定値の調整を何度も繰り返す場合もあって、余分なコストがかかるという課題もあった。

 新システムにより、不具合が発生する前にその傾向をAIが検出して設定の補正を提示し、射出成形機にフィードバックする「スマート生産ライン」(富士ソフト)を実現。熟練者の経験と勘に頼ることなく生産の安定化と製品の品質向上を図れる。豊田自動織機によると、次期車種の生産準備におけるリードタイムの短縮も可能。属人性に頼る作業を排除できれば、熟練者がより付加価値の高い作業に時間を割けるようになるなど、業務生産性の向上も期待できる。

 同システムについて豊田自動織機と富士ソフトは、2019年1月に概念実証(Proof of Concept:PoC)を開始。約1年にわたり、設定値を予測可能か、機械学習のシステム化が可能か、AIが実際の運用に耐えられる精度を出せるかを検証した。その結果、机上の予測精度を高められたことから、20年2月に実装プロジェクトへ移行した。

 実装段階では「想定していた精度がなかなか出なかった」(豊田自動織機)ため、豊田自動織機の生産技術と富士ソフトのデータ分析技術を組み合わせて、AIモデルのアルゴリズムやデータの前処理方法、変数の組み合わせなどの検討を繰り返し「実運用に使えるレベルまで精度を高めた」(同)。20年8月にシステムの構築が完了し、現在は実際のバンパー生産に利用しながら運用評価を継続している。

 豊田自動織機は今後、同様のシステムを他の工程や他の事業部に展開する予定。具体的には、工程数や収集すべきデータの多い自動車の塗装工程を想定し、機械学習に適したセンサーデータの選定と、それらを取得・分析するためのIoT(Internet of Things)システムの構築を計画している。富士ソフトは協力を継続する。