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 横浜ゴムは、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)や産業技術総合研究所(産総研)、先端素材高速開発技術研究組合(ADMAT)との共同研究により、バイオエタノールからブタジエンを大量に合成し、自動車用タイヤを試作することに成功した(図)。バイオマス由来のブタジエンからタイヤを生産する技術を確立できれば、二酸化炭素(CO2)排出量の削減と持続可能な原料調達の実現が期待できる。

図 バイオマス由来のブタジエンゴムを用いて試作した「BluEarth-GT AE51」
図 バイオマス由来のブタジエンゴムを用いて試作した「BluEarth-GT AE51」
(出所:横浜ゴム)
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* 横浜ゴムのニュースリリース

 今回の研究では、バイオエタノールの処理量を従来の約500倍に増やした大型の触媒反応装置を設計・製作し、ブタジエンの大量合成を検討した。反応条件を最適化するとともに、生成したブタジエンの捕集方法の改良により、約20kgのブタジエンを合成できたという。

 さらに、このブタジエンを蒸留精製して純度を高めた後、重合反応によってブタジエンゴムを合成し、それを使って自動車用タイヤを試作した。大型触媒反応装置の設計・製作とブタジエンの大量合成は産総研が、生成したブタジエンの高純度化はADMATが、高純度ブタジエンのゴム化とそれを原料にしたタイヤの試作については横浜ゴムが、それぞれ担当した。

 横浜ゴムが試作したのは、低燃費性能を特徴とする「BluEarth-GT AE51」の185/60R15サイズ。路面と接触する部位である「キャップトレッド」と側面の「サイドウォール」をバイオエタノール由来のブタジエンゴムと天然ゴムで製造し、石油由来のゴムを使用したときと同等の材料性能を持たせた。キャップトレッドは、路面からの衝撃や外傷からタイヤ内部を守るだけでなく、グリップや摩耗の抑制といったタイヤの性能にも大きくかかわる。同部位においてブタジエンゴムは、摩耗を抑える役割を果たす。一方のサイドウォールは、走行時に最も変形が大きな部分のため、柔軟で変形に追随しやすいブタジエンゴムが使われているという。

 横浜ゴムと産総研、ADMATは、NEDOの「超先端材料超高速開発基盤技術プロジェクト(超超PJ)」事業(事業期間:2016~21年度)を受託。超超PJが推進する「計算科学技術」「プロセス技術」「先端計測技術」の開発を通して、バイオエタノールからブタジエンを高速かつ高効率に合成する技術の開発に取り組んでいる。

 19年には、触媒の配合状態や反応条件に関する大量のデータを取得・解析するハイスループットシステムとデータ駆動型の機械学習、触媒化学と情報科学を融合させた「触媒インフォマティクス」の活用により、当時では世界最高のブタジエン収率を実現する触媒システムを開発。生成したブタジエンからのブタジエンゴムの合成にも成功した。翌20年には、触媒の工夫によってブタジエン収率が19年比で1.5倍の触媒システムを開発している。今回は、同システムを用いて反応システムをスケールアップし、ブタジエンの大量合成とそれを原料にタイヤを製作するまでの一連のプロセスを実証した。