中国University of Science and Technology of China(中国科学技術大学)と中国Chinese Academy of Sciences(中国科学院)は2021年7月、非常に安価で耐湿性にも優れた全固体電池向け電解質材料を開発したと発表した 発表資料 。また、学術誌の「Nature Communications」に掲載された 論文

 この電解質は塩化リチウムジルコニウム(Li2ZrCl6)。いわば「塩化物系材料」で、硫化物系、酸化物系、水素化物系に次ぐ第4の固体電解質向け材料系といえる。固体電解質の特性として最も重要なイオン伝導率は0.81mS/cmと、同25mS/cmの材料が知られている硫化物系固体電解質には届かないが、酸化物系固体電解質の高伝導率材料とは肩を並べる。

図 硫化物系固体電解質、酸化物系固体電解質、そして新旧の塩化物系固体電解質の諸性能の比較
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図 硫化物系固体電解質、酸化物系固体電解質、そして新旧の塩化物系固体電解質の諸性能の比較
新旧の塩化物系固体電解質(濃い緑色)と硫化物系固体電解質(黄色、グラフ中では薄い緑色に見える)、酸化物系固体電解質(薄い赤色)の諸性能を比較した。七角形のグラフは上から時計回りに、イオン伝導率、酸化安定性、還元安定性、量産時の価格の低さ、耐湿性、電池としての製造しやすさ、材料の量産しやすさ。従来の塩化物系固体電解質は量産時の価格が酸化物系よりも高かった(硫化物系材料よりは安い)が、今回の塩化物系固体電解質は、大幅な低価格化が見込めるようになり、耐湿性も向上した。(出所:中国科学院の発表資料より引用)

製造コストの低さや耐湿性の高さが特徴

 中国科学技術大学によれば、これまでも幾つかのレアメタルを用いた塩化物系材料は固体電解質としての特性が優れていることが知られていた。ただし、そのレアメタルが極めて高価であることが大きな課題だった。一方、ジルコニウム塩(ZrCl4)は、調達コストが12.5米ドル/kgで、それまでの塩化物系材料の1/25以下と非常に安い。Li2ZrCl6を用いて厚み50μmの固体電解質層を製造した場合、製造コストは1.38米ドル/m2で済み、既存の固体電解質に比べても大幅に低コストだとする。

 既存の固体電解質材料に対するもう1つの強みは、耐湿性の高さだという。湿度5%までは安定であるため、一般的なドライルームで保管でき、保管コストが硫化物系材料より大幅に低くなるとする。

 さらに酸化安定性、つまりNMCなどの3元系正極材料に対する安定性は既存の硫化物系材料や酸化物系材料よりも高いとする。

課題は金属Li負極に対する安定性の低さ

 一方で、大きな課題もある。それが、還元安定性だ。具体的には負極、特に金属Li負極に対する安定性が、既存の硫化物系材料や酸化物系材料よりも低い。

 ただし、これは米QuantumScapeなどが採用する、2種類の電解質材料を使う技術などである程度回避できる可能性がある。